5つのストーリー

STORY 04 1滴に賭ける想い

  • その日は忙しかった。実験に続いて打ち合わせとバタバタとした時間を過ごしようやく席に戻った時、一通のメールに気がついた。そこにはこう書かれていた。「日本パッケージングコンテスト日本包装技術協会会長賞受賞決定」と。

  • 普段、何気なく使っている点眼剤。その容器には、本体、ノズル、キャップ、それぞれにその形になるべき理由がある。眼に入る一滴は約25~50μL(マイクロリットル)というとても少ない量だ。だが、その一滴はとてつもなく大きな役割を持つ。容器の研究・開発を行う自分のもとに、これまでにないユニバーサルデザインの容器を設計して欲しいという話が舞い込んだ。

  • 設計を進めるうえで、ひとつの譲れない信念があった。それは、常に相手の立場で考えること。相手とは、ドクターであり、患者さんであり、薬剤師であり、MRである。薬を守る役割は果たせているだろうか。適量が、きちんと患者さんの眼に落ちているだろうか。お年寄りや子どもたちにとって扱いやすい形状になっているだろうか…。ドクターや患者さんからのフィードバックに基づいた設計、試作品を使ったモニタリング、そこに人間工学に基づいたデザインエッセンスを加えていく。納得がいくまでのトライ&エラー。気がつくと完成までに5年の年月が流れていた。

  • 受賞の知らせは思いがけず、驚いたが、これでより多くの人々が容器に興味を持ってくれると思うと喜びがあふれた。興味を持ってもらうことで、より多くの人の意見が聞けるだろうし、様々なヒントももらえるだろう。何百、何千のロットを重ねることになるだけに、生半可な気持ちでは取り組めない厳しさはある。それだけに If I were you=使う人 にとって優しい1滴を追い求めていくことにやりがいを感じている。

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