先端技術と独自の研究体制のもと、人と科学の無限の可能性を探っています
All things in nature have a reason for being.
Today’s common sense is not common sense tomorrow.
これが、私たちの合言葉です。
千寿製薬では、国際的な共同研究や、産学協同研究など独自の研究体制をそなえ、従来のワクや固定概念にとらわれることなく、柔軟な発想で研究開発に挑んでいます。未来をみつめ、本当に必要とされる安全な医薬品をいち早く開発することが、私たちの目標であり、願いでもあるのです。
研究開発本部 トップメッセージ
みなさん、こんにちは。研究開発本部では『他の追随を許さないスピードで、眼疾患患者さまの第一選択薬となる First in Class、Best in Class の製品を提供し続けている』をビジョンに掲げ、日々研究開発活動に取り組んでいます。
私たちは「他の追随を許さないスピード」の実現に向けて、「眼の病気でお困りの患者さまに一日でも早くお薬を届けたい」という強い想いのもと、現在の常識にとらわれない工夫による業務の効率化や独自のプロジェクトマネジメント手法の活用などにより、研究開発期間の最短化に挑み続けています。
また、ビジョンにある「First in Class の製品」を、「新たな作用機序により優れた効果や安全性を有する画期的な製品」と定義しています。すなわち、First in Classの製品を創出することにより、まだ治療薬のない眼疾患に初めて治療薬を提供することはもちろんのこと、すでに治療薬が存在している領域においても、十分な効果が得られなかった患者さまに初めて十分な効果を提供することが期待されます。一方、「Best in Classの製品」については、「既存の製品に比べて最も優れた効果や安全性、利便性などを有する製品」と定義しています。例えば、既存薬と同じ作用機序であっても、化合物の特性により優れた効果や安全性を発揮する製品や、眼の中に注射をしなければならないお薬を、点眼剤のように身体を傷つけることなく治療できるようにした製品などです。
上記のような製品を継続的に創出すべく、ヒトでの効果予測の精度を高める眼疾患モデルの作製や眼局所に適用可能な化合物のスクリーニング技術開発、あるいは、革新的な技術によって標的部位へ適切に薬物の送達を可能にする製剤研究など、薬理からの視点のみならず、薬物動態、毒性、製剤も含めた多角的視点と、熱意、卓越性を持ち合わせたチームで種々の研究を推進しています。
一方、臨床開発においては、上記の視点で創出された開発化合物をよりスピーディーに製品化できるよう、開発地域を日本のみならずグローバルに展開しながら、洗練された薬事戦略のもとで最適な臨床パッケージを構築し、卓越したオペレーションを実行しています。当社では研究所と開発部が同じ拠点で業務を遂行しており、風通しの良い環境で研究開発に従事しています。
最後に、世界には眼の病気で苦しんでいる患者さまが数多くいます。病気に国境は無いと言われますが、私たちの研究開発活動にも国境はありません。日本のみならず、海外にも目を向けて、各地域における First in Class、Best in Class になり得る製品の上市を目指し、日々研究開発活動を進めています。これからも、変化とチャレンジを恐れず、患者さまの立場に立った製品開発を進めてまいります。
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オーキュラーサイエンス研究所
グローバルでのアンメット・メディカル・ニーズの充足に向けて研究拠点を日本(神戸)と米国(オレゴン州)に置いています。それらの拠点の連携下で、眼疾患の病態機序に関与する遺伝子やたんぱく質などを特定し、その研究成果にもとづいてオリジナルの開発化合物(主に低分子や中分子)を創生しています。また、私たちだけではすぐに求める特性を有する開発化合物を創生することが困難な場合には他社の創薬技術を積極的に取り入れています。さらに、いち早く製品化するため、産官学連携で非臨床試験を素早くクリアし、早期・探索的臨床試験を実施しています。
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総合研究所
■薬理研究
各眼疾患の医科学情報を調査して病態機序を理解し、それらをもとにアンメット・メディカル・ニーズに応える価値の高い創薬研究テーマを企画しています。また、特定の眼疾患に対する効果的な治療薬を見出すべく、様々な分子や化合物の作用機序などに関する情報を収集・精査しています。そして、培養細胞・動物実験などを通じて数多くある開発候補化合物の薬理作用を評価してその中から開発化合物を特定するとともに、その作用機序や効果を追究して、ヒトにおける効果を予測しています。そのために従来の研究解析手法などには囚われず、常に最先端技術を活用した創薬研究を行っています。■毒性研究
薬効が確認された開発化合物に毒性がないか、毒性がみられる場合はその程度や回復性の有無などを最先端技術も用いて評価しています。具体的には、毒性プロファイルのin silico シミュレーションや培養細胞・動物を用いた毒性試験・評価を実施しています。また、毒性試験や臨床試験などから得られたデータや知見をもとに、各国の規制当局と議論・合意形成しながら非臨床毒性試験のデータパッケージを構築しています。■薬物動態研究
開発化合物が生体に投与された後、どのように吸収され、組織に分布し、代謝・排泄されるのかを評価しています。点眼剤や眼内注射薬の開発では、全身の薬物動態だけでなく、眼局所の薬物動態も評価します。 薬物動態は、薬物の効果や安全性に密接に関わっています。動物実験などで得られた薬理試験や毒性試験の結果を薬物動態データにもとづいて解釈し、ヒトでの効果や安全性の予測に活用しています。■創剤技術研究
眼疾患においては、角膜や結膜といった前眼部から、網膜や脈絡膜といった後眼部まで、発症する場所が多岐にわたります。疾患が関わるに場所に薬物を効率的に届ける技術(DDS:ドラッグ・デリバリー・システム)と開発化合物の最適な組み合わせを探索・決定する創剤研究を行っています。DDS技術は、当社で構築した新しい技術だけでなく、他社が別目的で構築した技術も活用しています。■製剤研究
開発品・製品の製剤特性を向上させることに焦点を当て、安全性を考慮しながら薬物の効果が十分に発揮できるように、配合する添加剤の種類・量を設計する研究をしています。具体的には、製品の安定性や効果の持続性を確保することや、適切な投与形態や処方改良により、製品の副作用や投与負担を軽減し、患者さまの忍容性の向上を達成することを目標にしています。さらに、臨床試験に向けて、当社工場や外部製造受託施設と連携しながら、製剤の製造法検討及び治験薬製造なども行っています。■分析研究
新しい製品や既存製品などの有効成分や添加剤の特性を評価し、効果と安全性を維持するための品質管理を目的とした研究を行っています。原薬の純度、製剤の含有量及び安定性などの評価により、安全でかつ有効な医薬品を開発するための研究データを取得しています。同様に、非臨床試験、臨床試験及び承認申請において、規制要件を満たすデータパッケージを構築しています。さらに、品質の高い製品の安定供給を目指して、製造工程から製品の流通までを考慮した研究を行っています。 -
開発部
最適な開発プログラムを実践し、開発の成功確率を上げ、世界各国で一日でも早く新製品を上市させることが私たちのミッションです。開発部では、研究所が創出した開発化合物や他社からの導入化合物の効果と安全性を臨床試験で検証し、医薬品としての製造販売承認を取得する役割を担っています。業務の範囲はプロトコル立案から治験実施中の施設管理、データ収集・解析、承認申請まで幅広く、複数のグループが連携して進めています。開発化合物ごとに臨床データパッケージを策定し適正な臨床試験を遂行した後、得られたデータを解析し、各国規制当局へ製造販売の承認申請を行います。
千寿製薬の研究開発拠点
- 神戸イノベイティブセンター
- オレゴン研究室
研究に関する配慮
千寿製薬では、医薬品の開発の過程において実施される動物実験が、実験動物福祉の観点から適正に実施されるよう、「動物の愛護及び管理に関する法律」、「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(環境省)、「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」(日本学術会議)、「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針」(厚生労働省)等に準拠し、管理体制を整備し、実践しています。具体的には、動物実験に関する機関内規程*1を策定し、動物実験倫理委員会を組織することで、動物実験に対する厳格な審査と監視を行うとともに、研究者に対して、法令、各省庁の指針および実験動物倫理に関する教育訓練を実施しています。
最適な環境や実験手技により、実験動物のストレスを最小限にすることで、信頼あるデータを得ることができるという考えのもと、動物実験の計画立案および実施においては、3Rs*2の基本原則に加え、製薬会社としての企業責任であるResponsibilityを加えた4Rsの実践に取組んでいます。加えて、これらの取組みが適正に実践されていることを確認すべく、当該委員会による年1回以上の自己点検を実施し、改善を施しています。なお、当社の研究施設である神戸イノベイティブセンターは、国際的な第三者認証機関であるAAALAC International*3の認証を2020年11月に取得し、継続(最新調査2023年)しています。
*1 千寿製薬株式会社 動物実験に関する機関内規程(PDF)
*2 3Rsの基本原則
- Replacement(動物を用いない研究への代替)
- Reduction(実験に用いる動物数の削減)
- Refinement(動物が受ける苦痛の軽減)
*3 科学において動物が人道的に扱われることを推進する非営利の国際的認証機関。対象施設とその活動プログラムの審査を通じて、責任を伴った動物のケア及び使用が行われている施設であることを認証する。