角膜の構造

  • 角膜は目のバリアーとも呼ばれる薄い透明な膜で、表層から角膜上皮層、上皮基底膜、角膜実質層、デスメ膜、角膜内皮層から構成されています。
    角膜は目の中へ光を入れる窓のような役割とその光を屈折させるレンズの役割があります。そのため犬猫の角膜は透明で血管や色素がありません。

角膜潰瘍

角膜潰瘍とは何かの原因で角膜が傷害を受けて、角膜表面が傷つき欠損した状態を指します。角膜潰瘍は傷の深さにより角膜上皮層で とどまっている表在性と 角膜実質層にまで至る深在性に分けることができます。潰瘍が進行すると、角膜に穴が開く角膜穿孔になり失明する可能性もあります。

【角膜潰瘍の主な原因】

  • 外傷によるもの
  • 感染によるもの(細菌・ウイルス・真菌など)
  • まぶた・まつ毛の異常によるもの
  • ドライアイによるもの
  • 薬物によるもの(シャンプーも含みます)
  • 猫の外傷性角膜潰瘍
  • 犬の感染性角膜潰瘍

【角膜潰瘍の症状】

  • 痛そうに目をしょぼつかせる(目を開けない)
  • まぶたの痙攣
  • 涙が多い
  • 充血
  • 眼脂(目やに)の増加

角膜潰瘍の治療方法

角膜潰瘍の治療には、内科的治療と外科的治療があります。原因や潰瘍の深さにより治療方法が異なります。

  • 内科的治療:点眼薬がメインとなります。

    • 抗菌点眼薬:感染が原因の場合は必ず投与します。 潰瘍に細菌が感染すると急激に重症化する恐れがあります。
    • 抗コラゲナーゼ薬 :コラーゲンを分解するコラゲナーゼという酵素の働きを抑えます。コラゲナーゼは炎症に関係する細胞や細菌から産生されます。
    • 角膜保護点眼薬:保水作用や角膜上皮の傷が治るのを助ける作用があります。
    • その他:痛みを和らげるために消炎鎮痛剤の全身投与や反射性ぶどう膜炎※1に対して散瞳薬を投与することもあります。
  • 外科的治療:内科的治療で治癒しない場合や潰瘍が深い症例に検討されます。

    • 瞬膜※2 被覆術:角膜全体を瞬膜で覆う方法です。※3
    • 上下眼瞼縫合術:上まぶたと下まぶたを縫います。※3
    • 治療用コンタクトレンズ:治療用コンタクトレンズで角膜の表面を保護します。
    • 結膜移植・結膜有茎被弁術:結膜を切除して角膜潰瘍がある部分に縫い付けます。
    • ※1;反射性ぶどう膜炎:角膜に痛み を感じることで、ぶどう膜にも痛みの信号が伝わり起こる炎症です。
    • ※2;瞬膜:犬や猫の目頭にある薄い膜で、目の保護や涙を分泌する働きがあります。
    • ※3;瞬膜被覆術 や上下眼瞼縫合術の方法は目のバンテージ効果がある一方で、角膜への目薬の浸透の妨げや傷口が覆われて確認できないことなどのデメリットもあります。
  • 瞬膜被覆術
  • 結膜有茎被弁術