猫ヘルペスウイルス感染症

猫ヘルペスウイルスはヘルペスウイルス科に分類されるウイルスです。猫ヘルペスウイルスは猫だけでなくネコ科動物全般に感染します。猫ヘルペスウイルスが目、鼻、口から猫の体内に入ると粘膜でウイルスが増え、結膜・喉・気管支へと感染が広がります。

【猫ヘルペスウイルス感染症による症状】

  • 全身症状:発熱、元気がない(沈鬱)、食欲不振
  • 呼吸器症状:くしゃみ、鼻水、鼻づまり
  • 眼症状:結膜炎、角膜炎

一般的に症状は1~2週間以内に回復しますが、子猫では重篤になる場合もあります。

潜伏感染

症状がなくなっても猫ヘルペスウイルスは体から完全になくなることはありません。猫ヘルペスウイルスは三叉神経節に潜伏して、免疫の低下(ステロイド薬・免疫抑制薬の投与など)やストレス(出産・授乳・引っ越しによる新しい環境変化など )により再活性化して再発を繰り返します。

猫ヘルペスウイルス性眼疾患の症状

  • 眼脂(目やに)の増加
  • 涙が多い
  • 結膜充血
  • 結膜浮腫
  • 角膜炎・角膜潰瘍
  • まぶたが赤い

同じような目の症状はクラミジアやマイコプラズマ感染でもみられますが、猫ヘルペスウイルス感染では角膜にも及ぶことがあります。猫ヘルペスウイルス性眼疾患の特徴的な角膜の症状としては、木の枝の形のように角膜の表面が溶ける角膜潰瘍(樹枝状潰瘍)があります。木の枝状の潰瘍はさらに進行すると面積が広くなり地図のような形になります。

  • 猫ヘルペスウイルス性角結膜炎
  • 樹枝状潰瘍
  • 写真の黄緑色はフルオレセインと呼ばれる色素で、角膜の状態を調べるために使用します。角膜に傷や潰瘍があると色素に染まります。

新生子眼炎

  • 子猫で重度の角結膜炎が生じると結膜と結膜、または結膜と角膜が癒着します。癒着すると目がきちんと開かない、眼球の動きが阻害されることで視覚に影響を及ぼします。治療方法は手術により癒着をはがしますが、手術しても再度癒着することもあります。

  • 新生子眼炎

猫ヘルペスウイルス性眼疾患の治療方法と予防方法

治療

治療は抗ウイルス薬を用い、症状によっては抗菌薬や角膜治療薬の投与を行います。猫ヘルペスウイルス性の眼科的症状を軽減する抗ウイルス点眼薬としてはイドクスウリジン点眼液が承認されています。

予防

予防としてはワクチン接種がありますが、完全に感染を防ぐことはできません。
ワクチンは病気にかかる期間を短くする、症状を軽くすることが報告されています。多頭飼育で感染を疑われる猫がいる場合は、他の猫と接触しないようにすることが重要です。また良好な飼育環境でストレスを軽減することも大切です。