【眼科医監修】近視の人が老眼になったら?矯正方法や不快症状の簡単ケアを紹介
眼科医 熊谷悠太 先生

監修
眼科医 熊谷悠太 先生

神奈川県にある、梅の木眼科クリニック 院長。日本眼科学会認定 眼科専門医。都市・地域・大学の三つのステージで眼科診療・手術に携わってきており、特に日帰り白内障手術・緑内障・網膜硝子体疾患など、専門的な治療領域において高度な実績を有している。検査・診断から治療・手術・フォローまでをワンストップで実現することで、「安心して一院で完結できる眼科」を目指している。

年齢を重ねると多くの人が老眼に悩みますが、近視の人は見え方の変化に気づきにくく、対処が遅れてしまうことも少なくありません。遠くのものは見えづらいのに手元は見える、そうした近視特有の見え方が老眼のサインを隠してしまうのです。この記事では近視と老眼の違いや、近視の人が老眼になった場合の矯正方法、疲れ目や眼精疲労といった不快症状のケア方法までわかりやすく解説します。

近視と老眼の違い

近視と老眼はどちらも見え方に影響する目の状態ですが、原因や症状、発症時期、矯正方法などが異なります。まずは、それぞれの見え方や主な原因などを詳しく解説します。

近視とは

近視とは、遠くのものがぼんやりとしか見えず、反対に近くの文字やものは比較的はっきり見える状態を指します。

物をはっきりと見るためには、目から入った光が目の角膜や水晶体で正しく屈折し、網膜上で焦点が結ばれることが必要です。この光の屈折がうまくいかず、網膜の手前で焦点が結ばれてしまうと、ピント調節がうまくいかず、ぼやけて見えてしまうのです。
また近視には大きく分けて「軸性近視(じくせいきんし)」と「屈折性近視(くっせつせいきんし)」があります。
正視・軸性近視・屈折性近視の図説
近視を引き起こす原因としては、遺伝的要因と環境的要因のそれぞれが関与していると考えられています。

遺伝的要因
両親が近視ではない子どもに比べると、片親が近視である子どもが近視を発症するリスクは2.17倍、両親が近視の場合では5.4倍と言われています。

環境的要因
代表例は、近くのものを見る習慣と、屋外活動の少なさです。特に、近くのものを見る習慣が続くと、目のピント調節を行っている毛様体筋が過度に緊張して水晶体の屈折力が強くなり、近視になりやすくなります

近視に関して詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。

老眼とは

老眼とは、遠くから手元へ視線を移した際にピントが合いづらく、視界がぼやける状態です。正式名称は「老視」ですが、「老眼」という呼び方が一般的に定着しています。

もともと目は光を屈折させる水晶体と、その厚みを調節する毛様体筋の働きによって、遠くと近くの焦点を自動的に切り替えています。しかし、年齢を重ねると水晶体の弾力が失われ、毛様体筋も衰えるため、近距離を見る際に必要な調節が十分にできなくなります

その結果、「手元の文字がぼやける」「薄暗い場所で見えづらい」「近くを見た後に遠くへ視線を移すと、ピントが合うまで時間がかかる」などの症状が現れるようになります。
老視(老眼)の図説
老眼の発症時期には個人差がありますが、多くの人は40歳頃から徐々に自覚し始め、50代の間に調節力はほぼ失われると言われています。

なお、老眼は年齢を重ねると誰にでも起こりうる見え方の変化ですので、特別な病気ではありません

近視だと老眼になりにくい?

本の上に置かれたメガネ
老眼は加齢によって誰にでも起こりうる見え方の変化のため、進行度に近視かどうかは関係ありません。近視の人でも、遠くのものがよく見えるように矯正した状態では、40歳頃から手元が見えづらくなり、他の人と同様に老眼を自覚するようになります。

一方で、近視の人がメガネを外している状態、または弱い度数のメガネを使っている場合、もともと近くのものにピントが合いやすいため、老眼が進行していても気づきにくいことがあります。このため「近視だと老眼になりにくい」と誤解されがちですが、実際は老眼そのものの発症や進行に差はありません。

近視の人が老眼になった場合の矯正方法

老眼になっても矯正をせず、見えにくい状態のまま生活していると、目のピント調節を行っている毛様体筋が疲労し、眼精疲労につながることがあります。眼精疲労になると肩こりや頭痛、倦怠感、吐き気、食欲不振など、全身に症状が出るので、老眼を放置することは避けましょう。

近視の人が老眼になった場合の主な矯正方法は、初期の場合は弱めのメガネの使用、「近視用メガネと老眼鏡の併用」「遠近両用メガネの使用」「遠近両用コンタクトの使用」が挙げられます。ここからはそれぞれ詳しく解説します。

近視用メガネと老眼鏡を使い分ける

並んで置かれたメガネ
普段、近視用メガネを使っている人は、新たに老眼鏡を購入すれば状況に合わせてメガネを使い分けられます。この方法は「遠くを見るときは近視用メガネ」「手元の作業では老眼鏡」と、目的によってメガネを掛け替えることで見たい距離ごとに最適な視界を得られるのがメリットです。

ただし、メガネを2種類持ち歩く必要があるため、場面の切り替えが多い人は掛け替えの手間を負担に感じるかもしれません。

遠近両用メガネを使う

遠近両用メガネとは、遠くを見るための度数と、近くを見るための度数が1枚のレンズの中に組み込まれ、視線の位置によって遠方・手元のどちらにもピントを合わせることができるメガネです。1本で幅広い距離に対応できるため、近視の人でもメガネを掛け替える必要がありません。

ただし、レンズの特性上、慣れるまで視野が狭く感じたり、揺れやゆがみを覚えたりする場合があります。遠近両用メガネをスムーズに使いこなすためには、ピントの調節力がまだ残っている老眼初期の時期から掛け始めるのが理想的です。比較的早い段階から使用することで違和感を抑えられ、老眼が進行した後も継続して使用しやすくなります。

遠近両用コンタクトを使う

指先に置かれたコンタクト
コンタクトで視力矯正をしてきた人の中には、老眼鏡を新たに使い始めることに抵抗を感じる方も少なくありません。その場合の選択肢として、遠近両用コンタクトがあります。遠近両用コンタクトは、遠くを見るための度数と、近くを見るための度数が1枚のレンズの中に組み込まれているもので、遠方と手元のピントを自然と切り替えられます。

しかし、通常のコンタクトとは見え方が異なるため、遠近両用メガネと同じく、慣れるまでは違和感を覚えやすい点に注意が必要です。

近視の人が老眼で目の不快症状を感じたときの簡単ケア方法

老眼による目の負担を軽減するには、日常生活の中でできるセルフケアを取り入れ、目をいたわる習慣を意識することが大切です。ここでは、簡単にできる4つのケア方法を紹介します。

目を休ませる

目薬を使う女性
老眼による疲れ目を感じたときは、目を休ませることが大切です。以下のような行動を取り入れてみてください。
  • 20-20-20ルールなどの実践
「20-20-20ルール」は眼精疲労予防に非常に効果的です。20分ごとに、20フィート(約6メートル)先を20秒間見るというシンプルな方法です。
  • パソコンやスマートフォンを使う際は、1時間ごとに約15分は休憩をとる
  • しっかりと睡眠をとる
  • 目の疲れを感じたときは疲れ目用の目薬を使う
目のピント調節を行う毛様体筋の疲労は、市販の目薬でも緩和できます。疲れ目に効果のある成分は、大きく分けて次の3つです。目薬を購入する際は、これらの成分が含まれているか確認しましょう。
①目のピント調節を行い、毛様体筋の緊張を和らげて疲れ目を改善する成分
  • ネオスチグミンメチル硫酸塩
  • シアノコバラミン(ビタミンB₁₂) など
②目の新陳代謝を活発にし、血行を促進させることで、疲れ目を改善する成分
  • パンテノール(プロビタミンB₅)
  • ビタミンB₆(ピリドキシン塩酸塩)
  • ビタミンE(酢酸d-α-トコフェロール)
  • タウリン(アミノエチルスルホン酸)
  • L-アスパラギン酸カリウム など
③目にうるおいを与え、涙の働きを助けて疲れ目を改善する成分
  • ヒアルロン酸ナトリウム
  • コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 
  • 塩化カリウム
  • 塩化ナトリウム など

眼球体操やツボ押しをする

眼球体操をしている女性
老眼になると、ピント調節を行う毛様体筋が疲労します。目の疲れを感じたときは、眼球体操をやってみましょう。眼球体操は、眼球とその周辺の滞った血行を促すことで、緊張した筋肉を柔軟にし、目の疲れに効果があると言われています。

やり方(1セット)
  1. 上下を見る
  2. 左右を見る
  3. 目を寄せる
  4. 目をぐるぐる回す
その他、目に良いとされるツボを押すのもおすすめです。ツボ押しについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

遠近トレーニングを行う

遠近トレーニングを行っている女性
遠近トレーニングは、遠くと近くを交互に見ることでピント調節に関わる毛様体筋を動かし、目の疲れを和らげる方法です。毛様体筋への刺激によって血流が促進されるので、眼球体操やツボ押しと一緒に、毎日の習慣にしてみましょう。

やり方
  1. 腕を曲げて親指にピントを合わせる
  2. 腕をまっすぐ伸ばして親指にピントを合わせる
  3. 腕をまっすぐ伸ばして5mほど先にピントを合わせる
手順3で遠距離を見る際は、リビングルーム(15畳・正方形)の壁から反対側の壁までくらいが目安です。それぞれの距離にピントを5~10秒間合わせるのを1セットとして、5セットほど繰り返すと良いでしょう。

照明の明るさを調整する

シーリングライトを設置する人
老眼対策としてメガネやコンタクトで矯正していても、作業環境の明るさが不足していると文字が見えづらく、眼精疲労を招きやすくなります。読書や書き物、パソコン作業など、近くを見る機会が多いときは、以下のように照明にも配慮することが大切です。
  • 天井の照明とデスクライトを併用する
  • 照明は光が均一に広がるタイプを選ぶ
  • 部屋の明るさは6畳で80~100ワットを目安にする

「老眼かも」と思ったら早めの対策を

メガネを掛けて遠くを見る女性
近視の人でも年齢を重ねると老眼になる可能性があり、放置すると見えづらさだけでなく、眼精疲労や体調不良につながることもあります。見え方の改善方法としては、メガネやコンタクトによる矯正が有効ですが、「老眼かも」と感じたら、まず眼科を受診することが大切です。

自分では老眼だろうと思っていても、別の病気が原因で見え方が変化している可能性もあります。医師による診断を受けた上で自分に合った矯正方法を取り入れ、無理のない快適な見え方のある生活を目指しましょう。
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