飛蚊症(ひぶんしょう)の原因と解消法とは? 視界をちらつく黒い影。原因による症状の違いも
眼科医 佐藤昌昭 先生

監修
眼科医 佐藤昌昭 先生

和歌山県にある、さとう眼科 院長。日本眼科学会認定 眼科専門医。平成14年の開院当初より午前7時半のオープンと24時間の電話対応を行っており、現在では往診範囲を3県15市町村に拡大の上、無料送迎も実施している。医療過疎地での地域密着医療に日々尽力している。

飛蚊症とは、視界にちらちらとゴミやホコリ、虫、糸くずなどの浮遊物が飛んでいるような影が見える症状のこと。その原因は、眼球の内部の大部分を満たしている、無色透明のゲル状の硝子体(しょうしたい)が濁ることによるもので、この濁りの発生原因は、加齢に伴うものであったり、病気によるものであったりとさまざまです。
この記事では、飛蚊症の原因や治療の必要性、その治療法などについて解説します。

飛蚊症の症状とは

目を押さえる女性
「目の前に糸くずや髪の毛のような浮遊物が動いて見える、ちらちらとした影が動いてうっとうしい」などの症状に困っている場合、もしかしたらそれは飛蚊症の症状かもしれません。ここでは飛蚊症の具体的な症状やその原因について見ていきます。

飛蚊症の具体的な症状

前述の通り、飛蚊症は目の前に糸くずや髪の毛のような浮遊物が動いて見える、ちらちらと動く影のようなものが見える、といった見え方が多いとされていますが、その他にも、ごま状や虫状といったさまざまな形の黒い点や、たばこの煙状のように見えたり、時に動かず点のように見えることもあるようです。

見える位置としては、視界の中心部が多いようですが、なかには端の方に見えるという人もおり、見える数についても人によって異なり、1つだけ見える人もいれば、複数見える人もいます。また同じ人であっても日によって見えないときもあったり、多く見えるようになったりと、その見え方はさまざまです。
飛蚊症の見え方の例

硝子体とは眼球の形を保っているゲル状のもの

飛蚊症は、硝子体の濁りによって起きます。硝子体とは眼球の内部の大部分を満たしている無色透明のゲル状のもので、水晶体と網膜に接しています。役割としては、眼球の形を保つと同時に、水晶体を通して角膜から入ってきた光を網膜に伝えることです。
眼球断面図
この硝子体が濁る原因は、大きく分けて加齢による場合と病気による場合の2つあると言われています。

飛蚊症が起きる原因

虫眼鏡を覗いて驚いている女性
では飛蚊症が起きる原因である硝子体の濁りとは、どのようなものがきっかけで起きるのでしょうか。ここでは原因別に見ていきましょう。

加齢によるもの

透明な硝子体は加齢とともに、ゲル状の硝子体の容積が減少するのに対して液体成分の容積が増加していきます。

このような硝子体の液化は、硝子体の中心部より発生し、周辺部分に多く位置するゲル状の硝子体には細かなコラーゲンの繊維が集まってきます。この集合体が外から入ってきた光に当たり、たまたま網膜に影がくる位置にくることで、飛蚊症が自覚されると言われています


飛蚊症の原因としては、加齢によって引き起こされるものが最も多いようです。

網膜裂孔(もうまくれっこう)によるもの

目の奥には、網膜と呼ばれ、物を見るために大事な働きをしている組織があります。網膜裂孔とは、加齢などによってゲル状の硝子体が液化することを主な原因として網膜が引っ張られてしまい、網膜に裂け目や孔(あな)ができる病気です。

この病気の症状の1つに飛蚊症が挙げられ、墨が流れるように見えたり、細かい飛蚊症が多量に出現することが多いと言われていますが、自覚症状自体はそれほど多くなく、気がついたときには網膜剥離などに進行している場合もあります。

網膜剥離(もうまくはくり)によるもの

網膜剥離とは、網膜が何らかの原因によって剥がれることで、見える範囲(視野)の一部が欠け、大変見えにくくなる病気です。

主な症状としては、キラキラと光が見えるように感じると言った光視症(こうししょう)、視野欠損、視力低下などのほかに飛蚊症が挙げられますが、痛みを伴うことはほとんどありません。しかし網膜剥離はそのまま放置していると、失明につながる場合もあります。

硝子体出血によるもの

硝子体出血とは、他の部位からの出血によって硝子体内に血液が溜まることです。これによって硝子体が濁ることで飛蚊症の原因になることもあります。

ぶどう膜炎によるもの

眼球の内側にはぶどう膜と呼ばれる部分があり、虹彩・毛様体・脈絡膜の3つの組織から成り立っています。この部分に炎症が起こることをぶどう膜炎といい、これが原因で硝子体が濁る場合があります。

主な自覚症状としては、目の充血や痛み、かすみ、視力低下などがありますが、なかには飛蚊症の症状によってぶどう膜炎にかかっていることに気づくこともあるようです。ぶどう膜炎は、そのまま放置していると、失明につながる場合もあることから、できるだけ早い段階で眼科を受診しましょう。

そのほかの理由によるもの

飛蚊症の症状の発生はそのほかの病気が原因によるものもあったり、そもそも原因が不明なものもあったりとさまざまですが、正視の人に比べて、近視の人は飛蚊症を発症しやすい傾向にあるとも言われています。

飛蚊症の治療の有無は、原因によって異なる

なるほどと手を打つ女性
飛蚊症はその原因によって眼科で早く処置すべきものと、さほど気にしなくても良いものがあります。治療が必要がどうかは自分自身で判断することは難しいため、症状を自覚した際にはまず眼科を受診しましょう。

網膜への影響がなければ、一般的には治療は不要

硝子体の変化が網膜に及んでいない限り、一般的には治療の必要はないとされています。目の前に感じる浮遊物のように見えるものを消す方法は残念ながらありませんが、ほとんどの場合は、しばらくするとその存在には慣れてきて自然と気にならなくなると言われています。

眼科を受診した上で原因を調べることが大切

飛蚊症を自覚して眼科を受診した際には、適切な検査を受け、治療の必要性があるかどうかを診てもらうことが大切です。

特に、突然飛蚊症を自覚した場合には、要注意です。重大な変化が目の中で起きている可能性があり、網膜剥離のサインである場合もあります。網膜剥離は、そのまま放置していると、失明につながる重篤な病気であるため、できるだけ早い段階で眼科を受診しましょう。

【原因別】治療が必要な飛蚊症について

鏡をのぞき目元を気にする女性
診断の結果、治療が必要なものであるとされた場合、その治療はどのように進められるのでしょうか。ここではその具体的な治療方法について見ていきましょう。

網膜裂孔が原因である場合の治療

網膜剥離の前段階である網膜裂孔の状態で早期発見ができれば、裂け目や孔の周囲の網膜をレーザーや冷凍によって凝固させることで網膜剥離への進行を妨げる治療が行われます。

網膜剥離が原因である場合の治療

網膜剥離は、そのまま放置していると失明につながる重篤な病気です。そのため網膜剥離と確認された場合には、速やかに入院手術が行われます。手術の方法は状態によって選択されますが、視力に影響を及ぼす場合であれば、主にレーザーによる治療を行います。

硝子体出血が原因である場合の治療

硝子体出血の治療は、その出血の原因が何であるかによっても異なってきますので、まずは眼科を受診し、出血の原因を調べてもらい、今後の治療内容の説明を受けるようにしましょう。

ぶどう膜炎が原因である場合の治療

ぶどう膜炎の多くは原因不明であるため、治療の目的は、炎症をおさえて視力障害につながる合併症をできるだけ最小限に食い止めることです。

例えば、炎症を抑えるステロイド薬の目薬や、目の周りの組織に注射剤を使用する場合があります。また目の奥の炎症が強い場合には、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の全身投与が行われるなど状態にあった治療が行われます。

飛蚊症の原因を特定するためにも、早めの対処を心がけよう

目が治って喜ぶ女性
飛蚊症は、加齢や病気などさまざまな原因により起こります。加齢によるものの場合では、治療は必要ないとされていますが、病気が原因である場合には早めの治療が必要です。

いずれにしても、まずはその原因を特定することが大切です。目の前に糸くずや髪の毛のような浮遊物や、ちらちらと動くような影を、突如はっきりと自覚した場合は、すぐに眼科を受診するようにしてくださいね。

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