コンタクト装着中に充血するのはなぜ?原因や対策、予防法まで解説
眼科医 佐藤香 先生

監修
眼科医 佐藤香 先生

東京都にある、医療法人社団栄和会 主任執刀医 だんのうえ眼科亀有院 院長。年間3,000件以上の手術を行い、とくに最先端の多焦点眼内レンズの豊富な知識を駆使して行う白内障手術において、抜群の治療実績を誇る。女性眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力し、美容と健康を両立させた治療も展開している。

コンタクト装着時に目が充血してしまうのは、目に負担がかかっているサインかもしれません。「レンズが合っていない?」「目のかわき(ドライアイ)?」「ただの疲れ目?」と、原因が分からず不安になる方も多いのではないでしょうか。この記事では、コンタクトによる充血の主な原因や対処法、日常でできる予防法について詳しく解説します。

充血の種類と原因

コンタクトの装着有無にかかわらず、目が赤くなる代表的な症状としては「結膜充血」「毛様充血」「結膜下出血」の3つがあり、赤くなる箇所の特徴や症状、原因は異なります。

結膜充血

目の端や、白目の周辺が網目状に赤くなるのが特徴です。場合によってはまぶたの裏側も赤くなったり、目やにや流涙を伴ったりすることもあります。
結膜充血のイメージ図
結膜充血の原因(疾患によらないもの)
コンタクト装着による機械的刺激
コンタクトの長時間使用などによる目の疲れや、ドライアイ(目のかわき)
寝不足
結膜充血の原因(疾患によるもの)
花粉やハウスダストなどによるアレルギー性結膜炎
細菌・真菌(カビ)・ウイルスなどによる感染性結膜炎

毛様充血

毛様充血のイメージ図
黒目(角膜)周辺が網目状に赤くなり、まぶたの裏側までは充血しないのが特徴です。黒目から離れるほど赤色は薄れ、青紫を帯びたような色に見えることも。充血の他に、強い痛みを伴うこともあります。
目に強い痛みがある場合は、角膜に傷がついていたり炎症を起こしていたりするだけではなく、重篤な疾患が隠れていることもありますので早めに眼科を受診しましょう。
毛様充血の原因
細菌や真菌(カビ)の感染による角膜炎
ぶどう膜の炎症によるぶどう膜炎(※)
リウマチなどの全身性疾患による強膜炎
緑内障の一種である急性閉塞隅角緑内障(きゅうせいへいそくぐうかくりょくないしょう)
※ぶどう膜炎:ぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜の総称)に起きる炎症

結膜下出血

結膜下充血のイメージ図
充血とは異なりますが、目が赤くなる症状として「結膜下出血」というものもあります。結膜下出血とは、何らかの原因で結膜の血管が破れ、出血することで白目がべったりと染まるものです。ひどいときには驚くほど白目全体が真っ赤になることもありますが、通常痛みはなく、1~2週間で自然治癒することが多いとされます。

充血の種類や原因などは自分で判断できないことも多いので、目やにや流涙、痛みが伴ったり、何度も繰り返し結膜下出血が起こったりする場合は、早めに眼科を受診しましょう。

次の章からは、コンタクトの装着によって起こる充血の原因や、対処法などを紹介していきます。

コンタクトの装着で目が充血する主な原因

指先にのったコンタクト
コンタクトによる充血は、装着による機械的刺激、目のかわき(ドライアイ)や酸素不足、レンズの汚れなどが原因として挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

コンタクト装着による機械的刺激

結膜炎などの疾患に関係なく生じる結膜充血の原因の一つに、コンタクト装着による機械的刺激があります。機械的刺激とは、コンタクトと、角膜や結膜との摩擦や、コンタクトのずれ、角膜の圧迫などを指します。これらの刺激に対する炎症反応によって血管が拡張し、充血として現れる場合があります。

目やコンタクトのかわき

ドライアイ(目のかわき)や、コンタクトによるかわき(乾燥)など、目の乾燥感も充血を引き起こす原因の一つです。

コンタクトは、薄い涙の層に覆われている角膜(黒目)部分に直接装着するため、涙の層をコンタクトの表側層と裏側層に分断してしまいます。コンタクトの装着によって目の乾燥感が生じるのは、涙の層に薄い部分ができ、不安定になることで涙が均一に広がらないためです。

また、空気が乾いた環境で目やコンタクトが乾燥することも充血につながります。コンタクトが乾燥すると、眼球表面の水分を吸うことで涙が蒸発し、目に乾燥感が生じやすくなるのです。

さらに、コンタクトを装着した状態で目のかわきがひどくなると、目とコンタクトの間にある涙の層が減り、摩擦が生じることで充血やゴロゴロした異物感、かゆみの発生につながります。

コンタクト装着による目の酸素不足

目は涙から、酸素や栄養分を取り込んでいます。コンタクトの装着によって涙の量が減ってしまうと、涙に含まれる酸素量も不足し、角膜が酸素不足に陥ることがあります。酸素が不足すると、血液中に含まれる酸素を取り込もうと白目(結膜)の中にある血管が拡張し、充血しやすくなります。

自分に合っていないコンタクトの使用

度数が合っていない、または目の形状に合っていないコンタクト(ベースカーブ、直径など)を使用すると、目の中にある目のピントを調節する毛様体筋や、目の周りの筋肉に疲労が蓄積し、疲れ目につながります。目の疲れを回復させるため、目に酸素や栄養分を運ぼうとする力が働くと血流量が増え、白目(結膜)の中にある血管が拡張して充血が起きます。

また、自分の目の形状に合っていないコンタクトの使用は、フィッティング不良の原因の一つです。角膜への刺激やコンタクトのずれといった機械的刺激を受けやすく、充血することがあります。

コンタクトの汚れ・傷

コンタクトにはホコリや化粧品、動物の毛といった目視しやすいものだけではなく、指先の汚れや雑菌、涙液に含まれるタンパク質など、目に見えないものも付着することがあります。

また、1DAYタイプ以外のコンタクトは使用後のケアが必須です。ケアが足りないとコンタクトの汚れは蓄積していき、コンタクトに傷がついたり、目に影響を及ぼしたりすることも。

こうしたコンタクトの汚れや傷などによる刺激も充血の原因の一つです。コンタクトの汚れが引き起こすアレルギー症状や目のトラブルについては、以下の記事で詳しく解説しています。

コンタクト装着中に充血した際の対処法

目薬を差す女性
コンタクトの装着で充血が起きてしまったら、まずは正しい対処が必要です。症状を悪化させないためのセルフケアや医療的対応を解説します。

コンタクトの使用を中断して目を休める

コンタクトの長時間装着は目に負担がかかり、目のかわき(ドライアイ)や目の酸素不足といった症状を引き起こしやすくなります。できる限り装着時間を短く抑えるようにし、充血、異物感やかゆみなどの違和感を覚えたら、コンタクトを外して目を休ませるようにしましょう。

まばたきを意識的に増やす

まばたきをすると涙腺が刺激され、流れ出た涙が目の表面を均等に潤してくれます。涙には酸素を運ぶ役割もあるため、まばたきは目の乾燥感と酸素不足の解消につながります。

パソコンやスマートフォンの操作など、何かに集中しているときはまばたきの回数が減少しやすいので注意が必要です。コンタクト装着時は特に、まばたきの回数を意識的に増やしましょう。

目薬を差す

早めに充血を改善したい場合は、拡張した血管の収縮をサポートする「血管収縮剤」が配合された目薬の使用がおすすめです。具体的には、成分表記に「塩酸テトラヒドロゾリン」や「ナファゾリン塩酸塩」「ブリモニジン酒石酸塩」の記載がある目薬が該当します。

ただし、血管収縮剤の使用は根本的な治療にはならないので、あくまでも症状の対処としての一時的な使用に留めましょう。

配合されている成分によっては、頻用すると効果が薄れたり効果が切れると、より充血することもあるので、自分に合った成分を選ぶようにしてください。どれが合っているか分からない場合は、薬剤師や登録販売者、もしくは医師に相談するなどしてみましょう。

また、コンタクト装着時には使用できない目薬も多いので注意が必要です。こうした制限がある目薬は、コンタクトの装着前に使用します。また、目薬の成分が目の表面に残っているうちにコンタクトを装着してしまうと、レンズに目薬の成分が吸着する可能性が高まるため、点眼後5分以上あけてから装着するようにしましょう。

眼科を受診する

コンタクトの使用を中断しても充血が続く場合は、早急に眼科を受診しましょう。充血の原因としては上述したもの以外にも、目の日焼けや目の炎症、目の疾患などもあるためです。

目の充血とともに、かゆみや目やにといった症状が出ていたら結膜炎の疑いもあります。強い痛みを伴う場合は角膜に傷がついていたり炎症を起こしていたりする他、重篤な目の疾患が隠れていることもあります。充血の原因が分からない場合は自己判断せず、医師に相談すると安心です。

コンタクトによる充血の予防法

並んだレンズケースとコンタクトの容器
コンタクトを使用する際は、充血を防ぐためにも正しい使い方やケアを実践することが大切です。ここからは、充血を未然に防ぐための具体的な方法を紹介します。

眼科で自分に合ったコンタクトを処方してもらう

コンタクトは眼科を受診せず、処方箋(指示書)がない状態でも店頭やインターネット通販などで購入できます。しかし自己判断での購入や使用は、自分の目に合わないコンタクトによるトラブルの原因になりえるので、避けた方が無難です。

眼科を受診し、目の形状(ベースカーブ、直径など)や、状態に合ったコンタクトを処方してもらうと、充血を含む目のトラブルのリスク軽減につながります。

また、目に異常がないかを確認するための定期検査も忘れずに受けましょう。

コンタクトの処方箋(指示書)の必要性や、入手前に知っておきたいポイントなどは、以下の記事で詳しく解説しています。

目のかわき(ドライアイ)を防ぐ

目のかわき(ドライアイ)は、充血の大きな原因の一つです。次のような方法で、目のかわき(ドライアイ)を防ぎましょう。
  • パソコンやスマホを長時間使用するときは、1時間ごとに15分は目を休める
  • まばたきを意識的に増やす
  • 加湿器を利用したり、エアコンの風が目に直接当たらないようにしたりする
  • 人工涙液タイプの目薬を使用する

コンタクトのケアをしっかり行う

使い捨ての1DAYタイプ以外のコンタクトは、使用後にしっかりとケアし、清潔な状態を保つことが大切です。コンタクトに触れる際は石けんを使って手洗いし、手先を清潔な状態にします。

こすり洗いが必要なタイプは両面しっかり行いますが、使用方法やケア方法はコンタクトのタイプによって異なる場合もあります。使用前に必ず説明文書を熟読し、記載された内容に従いましょう。

その他、レンズケースを清潔に保つことも充血予防につながります。コンタクト同様、レンズケースも毎日洗って自然乾燥させた上で、定期的な交換が大事です。コンタクトやレンズケースが汚れていると雑菌の繁殖につながるので、毎日のケアを徹底しましょう。

コンタクトの使用期限・期間を守る

コンタクトの使用期限とは、未開封の状態で安全に使える期間です。使用期限は、外箱やコンタクトの個包装に「EXP」や、砂時計のマークなどで記載されています。過去に購入したコンタクトを使用する場合は、装着前に必ず使用期限を確認するようにし、期限が過ぎていたら破棄しましょう。

また、1DAYや2WEEK、1MONTHなど、開封後の使用期間を守ることも大切です。使用期間は実際に装着した期間(日数)ではなく、開封してからの期間を指します。例えば2WEEKタイプのコンタクトを7月1日に開封し、途中3日間使用しない日があったとしても、開封日から2週間である7月14日を過ぎたら破棄し、新しいものを使うようにしましょう。

コンタクトの長時間使用を避ける

充血につながる目の酸素不足を防ぐためにも、コンタクトの長時間使用は避けましょう。装着可能時間には個人差があり、多くはコンタクトの処方時に医師から指示があります。決められた時間を超えての装着は控えた上で、帰宅後や休日は裸眼やメガネで過ごすなど、コンタクトを装着しない時間を設けることも意識してみてください。

コンタクトによる充血を防ぐには、日頃のケアと正しい知識が重要

コンタクトを装着する女性
目の充血は、コンタクト装着による機械的刺激や目の乾燥感、コンタクトの汚れ・傷など、日常生活の中でのささいな刺激でも起こりやすい症状です。コンタクトの正しい使用方法と日々のケアの習慣化が、目の健康を守る第一歩。目に異変を感じたら、コンタクトの使用を中止し、早めに眼科を受診しましょう。充血の有無を含めて、日頃から瞳そのものの状態をチェックすることも大切です。
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