東京都港区赤坂で眼科を診療している溜池眼科医院・院長。日本眼科学会認定 眼科専門医。地域の眼科のかかりつけ医として、わかりやすい説明と丁寧な診療がモットー。近隣の学校医と保育園医も担当している。また大学病院などと積極的に病診連携し、幅広い眼科医療を提供。緑内障の早期発見・治療に取り組んでいる。
涙は、目の涙腺から分泌される体液。目を乾燥から守ったり、目の表面の細胞に酸素を供給したりする役割を担っています。しかし、涙が常に流れ出て止まらない、涙で目がかすんでしまうときには、何か疾患があるかもしれません。この記事では、涙が止まらない原因や、正しい目薬の選び方など対処法を紹介します。
index
- 涙が止まらない! 考えられる2つの症状とは
- 目の表面の刺激により起こる「分泌性流涙(ぶんぴつせいりゅうるい)」
- 涙の通り道の障害による「導涙性流涙(どうるいせいりゅうるい) 」
- 「分泌性流涙」が起こる原因
- 原因① ドライアイ(目のかわき)
- 原因② ウイルスやアレルギーによる結膜炎
- 原因③ 花粉やホコリ、逆まつげなどの異物混入
- 原因④ コンタクトの不適切使用による角膜疾患
- 「導涙性流涙」が起こる原因
- 原因① 涙の通り道がうまく機能しない疾患
- 原因② 顔の筋肉が動きづらくなる「顔面神経麻痺」
- 原因③ 白目にたるみができて起きる「結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)」
- 涙が止まらないときの対処法
- 眼科を受診する
- 市販の目薬を使う
- コンタクトを正しく使用する
- 疾患だけじゃない? 涙が止まらない原因は他にも
- 原因① アイメイクなどの化粧品
- 原因② まつげエクステ
- 涙が止まらない原因を知り、状態に合わせた対応をしよう
涙が止まらない! 考えられる2つの症状とは
悲しくないのに涙が止まらない…。それは目の異常が原因で起きる「流涙症(りゅうるいしょう)」かもしれません。「流涙症」とは、涙が常に溢れ出たり、うまく排出できなくなったりしてしまう症状のことで、その原因によって大きく2つのタイプに分けられます。まずは、その2つについて解説します。
目の表面の刺激により起こる「分泌性流涙(ぶんぴつせいりゅうるい)」
涙が多く出ることによる流涙症を、分泌性流涙といいます。これは、ドライアイやアレルギー、逆まつげ、角膜疾患などで目の表面が過敏になっていて、刺激に対し過剰に反応して涙が分泌されてしまうために起こります。
涙の通り道の障害による「導涙性流涙(どうるいせいりゅうるい) 」
「流涙症」のうち、目の表面から涙点への流入障害によって涙が止まらなくなったり、涙の排水管(涙道)が詰まってしまうことで通過障害が起きることを、導涙性流涙と言います。
「分泌性流涙」が起こる原因
先述したように、目の表面に刺激が与えられたときに涙が溢れてしまう「分泌性流涙」は、目が刺激に過剰に反応することで発症します。ここでは、具体的にどんな刺激が原因となるのかを紹介します。
原因① ドライアイ(目のかわき)
目の表面が乾くことで、それが刺激となって一時的に涙が多く分泌されることがあります。これは、反射性分泌と呼ばれる症状です。目の表面が乾き、涙の層が薄くなると、目を守ろうとして涙を多く出そうとすることで生じます。
パソコンやスマートフォンを長時間使用しまばたきの回数が減っているときや、エアコンによる乾燥などでドライアイ(目のかわき)になってしまうこともあります。
パソコンやスマートフォンを長時間使用しまばたきの回数が減っているときや、エアコンによる乾燥などでドライアイ(目のかわき)になってしまうこともあります。
原因② ウイルスやアレルギーによる結膜炎
結膜炎とは、ウイルスや細菌の感染やアレルギー反応で、目の結膜(白目の表面とまぶたの裏側を覆っている半透明な膜)に炎症が起きる疾患のことです。炎症による刺激で涙の量が増え、流涙を起こすことがあります。
結膜炎には主に以下のタイプがあります。
結膜炎には主に以下のタイプがあります。
【細菌性結膜炎】
黄色ブドウ球菌などの細菌に感染して生じる炎症です。抵抗力が弱い高齢者や乳幼児などは慢性化することもあります。
【ウイルス性結膜炎】
ウイルスに感染して発症し、まぶたが腫れて充血し、かゆみを伴い、目やにや涙がたくさん出たり、耳の前にあるリンパ節にしこりができたりすることもあります。
「はやり目」とも呼ばれ、感染力が強く注意が必要な“流行性角結膜炎”や、小児に生じることが多く夏に流行することが多い「プール熱」とも呼ばれる“咽頭結膜熱”があります。
【アレルギー性結膜炎】
花粉やハウスダストなどのアレルギー物質の刺激で起きます。花粉など季節性のあるものと、ほこりやダニなどのハウスダストによって1年中症状が続くものとがあります。
黄色ブドウ球菌などの細菌に感染して生じる炎症です。抵抗力が弱い高齢者や乳幼児などは慢性化することもあります。
【ウイルス性結膜炎】
ウイルスに感染して発症し、まぶたが腫れて充血し、かゆみを伴い、目やにや涙がたくさん出たり、耳の前にあるリンパ節にしこりができたりすることもあります。
「はやり目」とも呼ばれ、感染力が強く注意が必要な“流行性角結膜炎”や、小児に生じることが多く夏に流行することが多い「プール熱」とも呼ばれる“咽頭結膜熱”があります。
【アレルギー性結膜炎】
花粉やハウスダストなどのアレルギー物質の刺激で起きます。花粉など季節性のあるものと、ほこりやダニなどのハウスダストによって1年中症状が続くものとがあります。
原因③ 花粉やホコリ、逆まつげなどの異物混入
目にホコリや砂などが入ると、異物を排除しようとする体の防御反応で涙がでます。中でも、鉄粉やガラス片、砂などが目に入ると流涙を起こしやすくなります。また、逆まつげでまつげが眼球に当たると、その刺激が流涙の原因になることもあります。
原因④ コンタクトの不適切使用による角膜疾患
コンタクトの不適切使用により、角膜疾患(角膜感染症、角膜上皮障害など)を起こし、流涙を発症することがあります。角膜とは、眼の黒目部分をドーム状に覆う透明な膜で、刺激に敏感なため、角膜が傷つくと流涙が起きるのです。
また、清潔でないコンタクトを装着したときには、ウイルス侵入や感染を防ぐために涙が止まらなくなることもあります。
また、清潔でないコンタクトを装着したときには、ウイルス侵入や感染を防ぐために涙が止まらなくなることもあります。
「導涙性流涙」が起こる原因
「導涙性流涙」は、涙が通る道(涙道)に障害が起きてしまうことが原因です。ここでは、「導涙性流涙」が引き起こされるきっかけとなる疾患について、いくつか紹介します。
原因① 涙の通り道がうまく機能しない疾患
涙は涙腺で分泌され、まぶたの内側にある涙点から涙道を通って鼻腔に流れ込みます。この涙道が詰まったり狭くなったりして鼻腔に流れなくなり、涙が目からあふれることを、鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく)、もしくは鼻涙管狭窄(びるいかんきょうさく)といいます。
具体的な症状としては、以下のようなものがあります。
具体的な症状としては、以下のようなものがあります。
- 涙があふれる、目がウルウルする(流涙・流涙症)
- 涙で視界がぼやける
- 涙があふれ、皮膚についた涙が刺激となり目の周りの皮膚に炎症を起こし、切れる・ただれるといった症状が起きる
- 涙嚢炎(るいのうえん)を発症し、目やにが出たり、目頭が腫れたりする
風邪や副鼻腔炎(畜膿症)の炎症によって涙道が狭くなったり、鼻の手術の後遺症などで塞がったりしてしまうと発症することがあります。
また、加齢による変化や、まれに涙道内のポリープや腫瘍なども原因となることもあります。
また、加齢による変化や、まれに涙道内のポリープや腫瘍なども原因となることもあります。
原因② 顔の筋肉が動きづらくなる「顔面神経麻痺」
顔面神経麻痺とは、顔を動かす筋肉を支配している顔面神経が何らかの原因によって傷つき、目や口が閉じられなくなったり、味覚障害が起きたりする症状のことです。
顔面神経麻痺の原因には、ウイルス感染や外傷、脳梗塞、脳腫瘍などが挙げられます。
顔面神経麻痺により、まばたきする力が弱くなると、涙を涙点から吸い込むポンプ作用が十分に働かなくなり、導涙性流涙が起きることがあります。
また、目が完全に閉じないこと(閉瞼不全)が原因でドライアイ、角結膜障害が生じ、その刺激症状により涙の分泌が増えることもあります。
顔面神経麻痺の原因には、ウイルス感染や外傷、脳梗塞、脳腫瘍などが挙げられます。
顔面神経麻痺により、まばたきする力が弱くなると、涙を涙点から吸い込むポンプ作用が十分に働かなくなり、導涙性流涙が起きることがあります。
また、目が完全に閉じないこと(閉瞼不全)が原因でドライアイ、角結膜障害が生じ、その刺激症状により涙の分泌が増えることもあります。
原因③ 白目にたるみができて起きる「結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)」
結膜弛緩症とは、結膜(白目)がたるみ、目の表面やまぶたの縁などでしわを形作る症状のこと。
結膜のしわが、涙点へ向かう涙の流れを堤防のようにせき止めたり涙点を覆うことで、涙の涙道への流入が妨げられて流涙を起こします。主に、加齢で起こることが多い症状です。
結膜のしわが、涙点へ向かう涙の流れを堤防のようにせき止めたり涙点を覆うことで、涙の涙道への流入が妨げられて流涙を起こします。主に、加齢で起こることが多い症状です。
涙が止まらないときの対処法
突然涙が止まらなくなる症状には、さまざまな原因が考えられることがわかりましたが、普段の生活の中で自分で気を付けられることもあります。涙が止まらないときには、まずはどう対処したら良いのか、紹介します。
眼科を受診する
常に目が潤んでいたり、涙があふれ出たりするようなときは、眼科で診察を受けることをおすすめします。症状によっては、目薬での治療ではなく手術が必要なこともあります。
目だけでなく、鼻の症状も辛い場合は花粉症やアレルギー性鼻炎の可能性もあるので、耳鼻科を受診してみましょう。
目だけでなく、鼻の症状も辛い場合は花粉症やアレルギー性鼻炎の可能性もあるので、耳鼻科を受診してみましょう。
市販の目薬を使う
ドラッグストア等で購入できる市販の目薬では、「プラノプロフェン」という成分が配合されたものがおすすめです。
「プラノプロフェン」は抗炎症作用があり、炎症性の流涙に効果が期待できます。
ただし症状によって適切な目薬が分からない場合は、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
「プラノプロフェン」は抗炎症作用があり、炎症性の流涙に効果が期待できます。
ただし症状によって適切な目薬が分からない場合は、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
コンタクトを正しく使用する
コンタクト装着中に涙が止まらなくなったら、すぐ外して眼鏡に変えましょう。コンタクトを長時間使用するとドライアイ(目のかわき)になる可能性もあるので、あまり長時間使用しないようにするのもおすすめです。
毎日正しい洗浄を行い、レンズを清潔に保つことも重要です。
毎日正しい洗浄を行い、レンズを清潔に保つことも重要です。
疾患だけじゃない? 涙が止まらない原因は他にも
涙が止まらなくなる原因は、目の疾患だけではなく、毎日何気なくしているアイメイクが原因となる可能性もあります。まつげエクステやつけまつげを施したり、化粧品を変えたりしたときには、気を付けるようにしましょう。
原因① アイメイクなどの化粧品
皮膚が薄い人は、化粧品や薬品などの影響を受けやすく、アレルギーにより眼瞼(がんけん)皮膚炎を発症することで涙が止まらなくなることがあります。
また、化粧品の細かな粉などでコンタクトが汚れ、目に炎症を起こし涙が止まらなくなることも。コンタクトを使用する場合は、手についた化粧品がレンズにつかないよう、コンタクトを装着してから化粧をするようにしましょう。
アイラインやマスカラは、まぶたの縁ギリギリまで塗るとコンタクトに付いてしまい汚れて炎症に繋がるほか、まぶたの縁にある脂の分泌腺(マイボーム腺)に炎症を起こしたり、分泌腺をふさぐことでドライアイを引き起こして、涙が止まらなくなることもあるので注意が必要です。
また、化粧品の細かな粉などでコンタクトが汚れ、目に炎症を起こし涙が止まらなくなることも。コンタクトを使用する場合は、手についた化粧品がレンズにつかないよう、コンタクトを装着してから化粧をするようにしましょう。
アイラインやマスカラは、まぶたの縁ギリギリまで塗るとコンタクトに付いてしまい汚れて炎症に繋がるほか、まぶたの縁にある脂の分泌腺(マイボーム腺)に炎症を起こしたり、分泌腺をふさぐことでドライアイを引き起こして、涙が止まらなくなることもあるので注意が必要です。
原因② まつげエクステ
まつげエクステなどでも涙が止まらなくなることがあります。これは、接着剤の揮発成分が目にしみて、目が痛くなったりすることが原因と考えられます。
接着剤起因の場合は、接着剤が完全に乾けば2~3日で治まりますが、それでも涙が止まらない場合は、着けたまつげ自体が目の表面に触れている可能性もあります。気になるときはまつげの状態を確かめてみましょう。
まつげエクステ以外に、つけまつげの接着剤でも同様の症状を発症する可能性があるので注意が必要です。
これらのように、化粧品やまつげエクステなどが原因で涙が止まらなかったり何か違和感があったりする場合は、早めに眼科を受診しましょう。
接着剤起因の場合は、接着剤が完全に乾けば2~3日で治まりますが、それでも涙が止まらない場合は、着けたまつげ自体が目の表面に触れている可能性もあります。気になるときはまつげの状態を確かめてみましょう。
まつげエクステ以外に、つけまつげの接着剤でも同様の症状を発症する可能性があるので注意が必要です。
これらのように、化粧品やまつげエクステなどが原因で涙が止まらなかったり何か違和感があったりする場合は、早めに眼科を受診しましょう。
涙が止まらない原因を知り、状態に合わせた対応をしよう
目が過剰な涙で常に潤んでいたり、涙が流れ出て止まらないようなときは様々な疾患が疑われます。早めに眼科で診察を受けましょう。
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