「たかが涙目(なみだ目)」って考えてない? 自分で出来る涙目の解消法も紹介
眼科医 鹿内真美子 先生

監修
眼科医 鹿内真美子 先生

東京都港区赤坂で眼科を診療している溜池眼科医院・院長。日本眼科学会認定 眼科専門医。地域の眼科のかかりつけ医として、わかりやすい説明と丁寧な診療がモットー。近隣の学校医と保育園医も担当している。また大学病院などと積極的に病診連携し、幅広い眼科医療を提供。緑内障の早期発見・治療に取り組んでいる。

悲しいときや、笑いすぎたときに流れる涙とは別に、なんでもないときに涙が溢れてくる状態を「涙目(なみだ目)」と言います。医学的に「流涙症(りゅうるいしょう)」と言い、涙が出ていく通り道が細くなったり、詰まってしまったり、何らかの刺激で涙が過剰に作られると起きるとされています。どんな原因で涙目になるのか、また解消するにはどんなことをすれば良いのかをみていきましょう。

涙目について知る前に確認! 涙が出るメカニズムとは

こめかみを押さえる女性
実は悲しいときや、目にゴミが入ったときのように「涙がポロポロこぼれる」とき以外も、涙はずっと出続けています。その理由は目のうるおいをキープするため。まずは、どんな仕組みで涙が出るのか知っておきましょう。

涙の役割ってどんなもの?

涙は、常に目をうるおすことで結膜や角膜などの目の表面に酸素や栄養を供給したり、角膜などを傷や細菌から守ったりするはたらきがあります。涙が不足すると目がかわくだけではなく、角膜を傷付ける要因にもなります。

まばたきがポンプとなり涙が出る

涙腺から出てくる涙は、まばたきによって目の表面を覆います。目の表面をうるおした涙は、約10%ほどが蒸発し、残って古くなった涙は「涙点(るいてん)」という目頭にある穴の部分から排出され、鼻腔の方へと流れていきます。通常は1分間に約20〜30回程まばたきを繰り返すことで、目の表面の涙をリフレッシュさせています。

悲しくないのに涙が出る、涙目の原因とは

涙をおさえる女性
涙目の原因は大きく2つあります。
1つは目が敏感になり、ちょっとした刺激で涙が過剰に作られる状態になること。
そしてもう1つは、涙の出ていく通り道が狭くなったり、詰まってしまったりすることです。どんな原因で涙目になってしまうのか、具体的に紹介します。

涙が余計に作られてしまう「分泌性流涙(ぶんぴつせいりゅうるい)」

ドライアイやアレルギー、逆まつげ、結膜炎や角膜炎などにより、目の表面が刺激に対して過剰に反応し、涙が分泌されてしまう状態を「分泌性流涙」と言います。
この場合、目薬や内服薬による治療が中心になります。また、逆まつげや異物による刺激が原因の場合は、刺激の元となっているものを取り除くと改善する場合が多いようです。
まずは眼科に行って、目が刺激を受けている原因を調べてもらうことが大切です。

涙の通り道が塞がれたり狭くなってしまう「導涙性流涙(どうるいせいりゅうるい)」

涙の排水管(涙道)が詰まり、涙が鼻へ抜けずに目から溢れてしまう状態を「導涙性流涙」と言います。原因には、涙道がなんらかの原因で詰まってしまう「涙道閉塞」、白目にたるみができる「結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)」などがあります。
涙道閉塞の場合、涙の排水管を詰まらせている要因を取り除き再開通させるか、新しく排水管を作る手術を行うといった治療法がとられます。同様に、結膜弛緩症に関しても、外科的治療を要するケースが多いです。
いずれの場合もまずは眼科に行き、原因を調べてもらうことが先決です。

日常生活の中でできる解消法

目薬をさす女性
「導涙性流涙」以外の場合には、自分で涙目を対処することも可能です。どのようなことに気を付ければ良いのか、具体的に紹介します。

市販の目薬で対処する

ドラッグストア等で購入できる市販の目薬では、「プラノプロフェン」という成分が配合されたものがおすすめです。
「プラノプロフェン」は抗炎症作用があり、炎症性の流涙に効果が期待できます。
ただし症状によって適切な目薬が分からない場合は、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。

部屋をこまめに掃除し清潔に保つ

花粉などのアレルギーが原因となっている場合、部屋の掃除をこまめに行うことや風通しを良くすること、花粉を外から室内に持ち込まないことが大事です。花粉の時期に窓を開けたり洗濯物を外に干したりすることは避けましょう。また花粉が付着しにくいナイロン製の上着を着用し、家に入る前に花粉を払うのも効果的です。
ダニの繁殖を防ぐためにカーペットは避け、こまめに掃除機をかけましょう。空気清浄機を活用するのもおすすめです。

細菌やウイルスから目を守るよう心がける

結膜炎・角膜炎など、菌やウイルスが原因となる病気は以下のことを励行して感染予防を心がけましょう。

(1)手で目をこすらない
手には思っている以上に細菌がいっぱいひそんでいます。もし目を日常的にこするクセのある人は、意識してクセを治すようにしましょう。

(2)帰宅後はよく手を洗う
コロナ禍により手洗いの大切さが再認識されましたが、健やかな目にとっても手洗いは大事な習慣です。石鹸をつけて、両手をこすり合わせながら爪の間や指の間などもしっかりと洗いましょう。

(3)ウイルス性結膜炎と診断された人とはタオルは別々にする
タオルなどを介して家族にも伝染することがありますので、トイレの手拭きタオルやバスタオルなどを家族と共有している場合は、治療が終わるまでの間だけでも、自分専用のタオルを使うようにしましょう。

コンタクトやメイク時に涙目になる場合の対処法

コンタクトを装着する女性
一方で「コンタクトや、メイクをしたときに限って涙目になる」など、限定的な条件下で涙目になってしまう人もいるようです。このような場合には、どんな対策をすれば良いのか紹介します。

コンタクト装着時に違和感のある場合は眼科を受診する

コンタクトをすると目にゴロゴロ、チクチクとした異物感を感じるという人は、角膜にキズがついている可能性があります。また「巨大乳頭結膜炎」といって、まぶたの裏にプツプツとしたものができ、それを異物感として感じている場合もあります。
これはコンタクトの付着物に対するアレルギー反応で、同時にかゆみなどの症状が出ます。いずれもコンタクトの使用を控え、すぐに眼科医に相談しましょう。
アイメイクをする女性

アイメイクの場所に気を付ける

まぶたにはマイボーム腺という、涙の蒸発を防ぐために油分を分泌している部分があるのですが、アイメイクやマスカラ、まつげエクステンションの接着剤などで、このマイボーム腺をふさいでしまうと、ドライアイを引き起こす原因となります。
メイク落としをする際は目の周りもやさしく洗い、メイク残りがないようにし、目に悪影響を与える元を残さないようにしましょう。

涙目が気になる場合は、まずは病院を受診しよう

涙目はひどくなると、涙によりまぶたなどが炎症を起こしてしまったり、涙道の中にある涙がたまる袋である「涙嚢(るいのう)」が細菌感染してしまい、目頭部分から膿などが出たりする場合もあり、原因によっては手術が必要になる可能性もあります。
「たかが涙目」とあなどらず、気になる場合は早めに眼科を受診しましょう。

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