まぶたを押すと痛いのはなぜ? 考えられる原因や対処法を紹介
眼科医 堤篤子 先生

監修
眼科医 堤篤子 先生

東京・練馬区のつつみ眼科クリニック理事長。日本眼科学会認定眼科専門医。クリニックではさまざまな方の視点に立ち、我が親・我が子・我が孫たちに受けさせたい治療を提供。遠くの大学病院に足を運ばなくても、地域で完結できる医療体制づくりに取り組んでいる。

目が疲れたときや異物感を感じて、まぶたをそっと押してみたら普段感じたことのない痛みを感じたことはありませんか?それはもしかしたら、まぶたの内側に異常が発生しているのかもしれません。考えられる原因と、その予防方法について見ていきます。

まぶたを押すと痛いときに考えられる原因

鏡を見る女性
「まぶたを押したときに痛みを感じる」とひと口にいっても、その原因としてさまざまなものが考えられます。ここではその可能性について見ていきましょう。

原因① ものもらい(麦粒腫・ばくりゅうしゅ)

外麦粒腫と内麦粒腫のイメージ図
まぶたや目のふちに細菌が感染し、まぶたの一部が赤く腫れる病気です。一般的には「ものもらい」と呼ばれ、地域によっては「めばちこ」「めぼ」「めいぼ」などと呼ばれることもあります。まぶたの一部が赤くはれ、まばたきしたり押したりすると痛みがあります。目やにが出て、まぶた全体が腫れることもあります。

さらに症状が進行すると患部が化膿して、膿が出ることもありますが、膿が出てしまえば、その後は回復に向かいます。
まぶたの皮膚にできる外麦粒腫(がいばくりゅうしゅ)と、まぶたの内側にできる内麦粒腫(ないばくりゅうしゅ)があります。

原因② 霰粒腫(さんりゅうしゅ)

霰粒腫イメージ図
まぶたの裏にあるマイボーム腺(脂質を分泌して涙の蒸発を防ぐ働きを持つ器官)が、何らかの原因で詰まって起きる病気です。まぶたにコロコロしたしこりができます。炎症を伴っている場合、麦粒腫に似た症状が出ることもあり、急性霰粒腫と言われます。

症状としては、ものもらい(麦粒腫)とは異なり、強い痛みを伴うことは少ないです。人にうつることはありませんが、放置するとしこりになって、そのまま残ってしまうことがあります。

原因③ 結膜炎

上下のまぶたの裏側と目の表面をつないでいる半透明の膜(結膜)に炎症が起こる病気です。結膜は病原菌やアレルギー物質を含むさまざまな物質と接触しやすく、感染や炎症が起きやすい場所です。炎症を起こすと白目が充血し、目やにや涙が出やすくなります。結膜炎には、細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎、アレルギー性結膜炎などの種類があります。

細菌性結膜炎
白いべっとりした目やにが出ることが多いです。

ウイルス性の結膜炎(アデノウイルス感染)
透明な目やにが多く出ます。まぶたの裏に濾胞(ろほう)というぶつぶつができ、充血や腫れが強くなります。耳の下のリンパ節の腫れが出ることもあります。治るまでに1週間から3週間と時間がかかります。人にうつるので注意が必要です。

アレルギー性結膜炎
かゆみ・充血・涙目(なみだ目)などが起こります。透明な目やにが出ます。結膜のむくみが強いこともあります。春季カタルという重症のアレルギー性結膜炎では、角膜の濁りが生じて視力障害が起こる危険性もあります。

原因④コンタクトレンズ障害

コンタクトによって、角膜に傷がついていることがあります。角膜に傷がつくと、目が痛くなります。目の充血、目やに、涙も出やすくなります。コンタクトを装着したまま寝てしまったり、長時間のコンタクト装用も原因の一つです。

また、目に合わないカラーコンタクトを装着している人もトラブルが多いようです。角膜が強い炎症を起こすと角膜が白くなり、視力が低下することもあります。

まぶたを押すと痛いときの対処法と日常生活での注意点

目薬をさす女性
まぶたを押して痛みがある場合、その原因によって治療法が異なります。ここからは、眼科での受診後、それぞれの原因から考えられる治療法を紹介します。それぞれの日常生活での注意点も、ぜひ参考にしてくださいね。

ものもらい(麦粒腫)になったときの治療と日常生活での注意点

抗菌剤の点眼薬や眼軟膏で治療します。点眼薬、眼軟膏では改善が期待できない場合、内服薬なども使用されます。

予防するにはまず、まぶたの細菌感染が原因となるため、汚れた手で目をこするなどしないようにし、常に目の周りを清潔に保つことが大切です。また、洗顔後に顔を拭くタオルなども清潔なものを使いましょう。コンタクトを使用している場合は、洗浄やケアをしっかりと行うように心がけましょう。

霰粒腫になったときの治療と日常生活での注意点

霰粒腫は軽度の場合は温罨法(おんあんぽう)や軟膏塗布で治療します。しこりが大きい場合は、しこりを取り除く手術が必要になることもあります。炎症を伴う急性霰粒腫では、抗菌剤の点眼や内服薬で炎症を抑えてから、手術による治療を行います。まぶたのしこりによっておこる変形などを残さないために、適切なときに手術を受けることが大切です。

小児の場合、手術に全身麻酔が必要となることもあるため、手術せず、眼軟膏や点眼薬で経過を見ることも多いようです。予防策として、汚れた手で目をこすらずに、目の周りを清潔に保つようにしましょう。

結膜炎になったときの治療と日常生活での注意点

結膜炎の種類によって、点眼薬や、内服薬、軟膏を用いる治療を行います。

細菌性結膜炎
抗菌剤の点眼薬を使用するのが主な治療法です。

アレルギー性結膜炎
はじめに抗アレルギー点眼薬を使用し、それでもよくならない場合はステロイド点眼薬を用います。重症なアレルギー性結膜炎である春季カタルに対しても基本的には同じ治療を行いますが、よくならない場合は免疫抑制薬の点眼を用います。

ウイルス性結膜炎
原因となるアデノウイルスに対する有効な薬剤はありませんが、別の細菌などの混合感染を予防するために、抗菌剤の点眼を行います。また、角膜の濁りがみられる場合には、ステロイド薬の点眼薬を使用します。

ウイルス性結膜炎のように感染力が強い場合は、人にうつさないようにする注意が必要です。手をしっかり洗う、目の周りを拭くときはティッシュを使うようにしてください。同じタオルを人と共有しないことも大切です。プールや公衆浴場は控える必要があります。

ウイルス性結膜炎は病原体(ウイルスの種類)によって症状、潜伏期間も異なります。もし子供がこれらの疾患にかかった場合、登園・登校禁止となりますので医師の指示に従ってください。

まぶたの痛みがあるときの、コンタクトの取り扱い方

コンタクトをする女性

コンタクトによる目の障害

まぶたに痛みが起こっている場合は、日ごろのケアも含めて、コンタクトの取り扱いにも注意が必要です。まぶたのあたりが痛いときのコンタクトの取り扱い方について紹介します。

まずはコンタクトを目から外す

コンタクトを装着していてまぶたが痛くなったら、すぐにコンタクトを外すことが大切です。症状が軽い場合は、コンタクトを着けないでメガネで生活したり、一晩しっかり寝たりするだけで、痛みが改善されることもありますが、激しい痛みを感じたり、コンタクトを外しても痛みが改善されない場合は眼科を受診しましょう。

コンタクトに異常がないか確認する

コンタクトが変形する原因は、使用期間を過ぎたコンタクトを使っている場合や、ケアが不十分な場合などです。コンタクトを装着する前に、変形や破損がないか必ず確認しましょう。

使用方法や普段のケアをきちんと守る

水分を多く含んでいるソフトコンタクトは、乾燥によっても変形するため、レンズケースに保存するときは、保存液にしっかり浸してください。コンタクトやレンズケースを清潔に保つことが大切です。
1DAYコンタクトは必ず1日で破棄し、連続して使わないでください。2WEEKコンタクトや1MONTHコンタクトも、使用期間を超えて使うのはやめましょう。

まぶたを押すと痛いときは、ひどくなる前に適切な対処をしよう

痛みが治まってうれしそうな女性
まぶたを押すと痛いときは、目やまぶた、その周辺にトラブルが起きているということ。原因をつきとめるには、眼科を早めに受診することが大切です。また、トラブルを回避するには、目を清潔に保つことが第一。イキイキと健やかな目を守るためにも、普段から、目の周りを清潔に保つように心がけましょう。

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