正しい目薬の差し方とは?1回で上手に差せるちょっとしたコツも紹介
眼科医 谷藤典子 先生

監修
眼科医 谷藤典子 先生

岩手県にある谷藤眼科医院副院長。日本眼科学会認定眼科専門医。メガネ、コンタクト、ものもらい、結膜炎、ドライアイ、眼精疲労といった眼科一般の病気はもちろん、日帰り白内障手術、網膜硝子体手術、レーザー眼科治療など専門治療も行っている。

「目のかわきが気になる」「病院で処方された」など、さまざまな理由で目薬を差す機会があると思いますが、「正しい目薬の差し方」があることを知っていますか? 普段、自己流で差している人も多いはずです。今回は、市販の目薬や病院で処方された目薬の正しい差し方と、目薬を上手に差すコツについて紹介します。

まず押さえておきたい! 「正しい目薬の差し方」

目薬のボトルイメージ
目薬を差したことがある人は多いと思いますが、「正しい目薬の差し方」をきちんと理解している人は、実はあまり多くありません。目薬の効果をしっかり得るために、まずは「正しい目薬の差し方」を覚えておきましょう。

1. 点眼前に、まずは手をきれいに洗う

まずは手を洗って清潔にします。病院で処方された目薬で、点眼する前によく振り混ぜるよう注意書きがあるものについては、キャップを閉じたまま目薬のボトルを振り、中の薬液を混ぜて濃度を均一にしてください。
手を洗う様子のイラスト

2. 下まぶたを狙って1滴落とす

次に頭を後方に傾け、天井を見つめるようにします。そして、一方の手で下まぶたを軽く引っ張り、容器を目の真上に持ってきて点眼します。下げた下まぶたに目薬を落とすイメージで点眼すると、うまくいくと思います。
下まぶたを押さえて目薬を差す女性のイラスト

3. 点眼後は静かに目を閉じ、目薬をなじませる

点眼後は、目を静かに閉じて目頭を1~5分程度軽く押さえます。目薬が溢れたら清潔なティッシュなどでふきとってください。
目の表面によく目薬を行き渡らせようとして、目をパチパチとさせる人がいるようですが、実はそうするとせっかく差した薬液が目から流れ出てしまいます。点眼後は静かに目を閉じるようにしてください。
ティッシュを1枚取り出している画像

苦手な人に朗報! 知っておきたい目薬の差し方のコツ

目薬を差す女性の画像
目薬を差すときに「つい目を閉じてしまう」など、差すのが苦手な人もいると思います。そんな人には、手軽にできる「げんこつ点眼法」がおすすめです。それでもうまくいかないときは、病院で処方された目薬に限り、「点眼補助具」を使用するという方法もあります。

狙いを定めて目薬を差す「げんこつ法」をやってみる

げんこつを下まぶたに当て、その上に目薬のボトルを持った手を乗せて目薬を差す「げんこつ点眼法」は、安定感が増し、狙いが定めやすいため、「最初の1滴」で成功する確率が高まります。簡単に手順を紹介します。
利き手にキャップを外した目薬を持ち、利き手と逆の手で親指を中に入れてげんこつを作っているイことを示すイラスト
1. 利き手にキャップを外した目薬を持ち、利き手と逆の手で親指を中に入れてげんこつを作ります。
げんこつの親指側を下まぶたに軽く押し付け、下まぶたを下へ引き下げている女性のイラスト
2. げんこつの親指側を下まぶたに軽く押し付け、下まぶたを下へ引き下げます。
目薬のボトルを持った手をげんこつに乗せて安定させ、ボトルを軽く押して点眼する女性のイラスト
3. 目薬のボトルを持った手をげんこつに乗せて安定させ、ボトルを軽く押して点眼します。

病院で処方された目薬では「点眼補助具」が使用できることも

目薬のボトルが固定できず、うまく目の中に目薬を落とせない人には、病院で処方された一部の目薬で使用できる「点眼補助具」という器具が販売されています。

これは、目薬を差すのが苦手な方やお年寄りでも、簡単に正しい位置に固定させて、ぶれることなく目薬を差せるよう点眼をサポートしてくれるものです。幅広い年代の方が使いやすいよう、押しやすく、軽い力でも薬液を出すことができるように設計されています。

点眼補助具はさまざまな形のものがあり、病院で処方された目薬でもぴったり合わず適応しないものがありますので、手持ちの目薬に合うのかが分からない場合は、薬局で薬剤師へ相談するか、点眼補助具のメーカーに問い合わせてください。

目薬を差すときに気を付けたいポイント

目薬のイメージ画像
目薬のボトルを目に触れさせたり、必要以上に目薬を差しすぎたりすると、かえって目に悪い影響を及ぼすことがあります。ここからは、目薬を差すときの注意点を紹介します。

目薬のボトルは目やまつげに触れないように気を付ける

目薬のボトルを清潔に保つために、ノズルの先が目やまぶた、まつげに触れないように注意しながら点眼してください。また、使用者が感染症などにかかっていた場合、目薬を介して感染する可能性があるので、目薬を他人と共用するのは避けましょう。

目薬は用法・用量を守って差す

つい効果を期待して2滴3滴…と点眼してしまいがちですが、用法・用量を守って、“差しすぎ”に注意しましょう。目薬が目の中に入る量は限られるので、多く点眼しすぎると目から溢れてしまいます。

そして、目のまわりに溢れた薬液がつくと、目のまわりのかぶれや色素沈着などの原因になる場合もあります。目薬が目から溢れた場合は、ティッシュペーパーなどでやさしくふきとってください。

2種類以上の目薬を差すときは間隔に気を付ける

2種類以上の市販の目薬を差す場合は、5分以上空けてから次の目薬を差すようにしてください。その場合、有効成分が同じ市販の目薬を併用することはおすすめできません。どうしても差したい場合は、薬剤師や登録販売者に相談するようにしてください。

2種類以上の目薬を病院で処方された人は、1つ目の目薬を差した後、次の目薬を差すまで十分な時間を空けなければならない目薬もあるので、併用する際は医師や薬剤師の指示に従ってください。また、病院で処方された目薬と市販の目薬と併用する場合も、医師や薬剤師に相談してください。

2種類以上の目薬を差している人は「順番」に注意する

医師は2種類以上の目薬を処方する場合、目薬の性質に合わせて点眼する順番を指示する場合があります。2種類以上の目薬を処方された場合は、必ず医師や薬剤師から指示された順に差すようにしましょう。
処方される目薬の性質としては、おもに下記のようなものがあります。
  1. 水溶性点眼液=水に溶けやすい成分のため澄明な液で、一般的な目薬です。多くの目薬はこれに該当します。
  2. 懸濁(けんだく)性点眼液=水に溶けにくい成分が配合されているため、多くの場合「よく振り混ぜて点眼」する旨の注意書きがあります。
  3. ゲル化点眼液=点眼後にゲル化し、目の表面に長時間留まるタイプです。
  4. 眼軟膏=水に溶けにくく、吸収されにくい軟膏のタイプです。眼軟膏をつけた後は点眼薬をはじいて吸収させにくくします。

目薬にまつわるQ&A

目薬を差してもらっている子どもの画像
コンタクトを装着しているときの目薬の使用法や、嫌がるこどもに目薬を差さないといけないときの方法など、多くの人が悩みがちな、目薬にまつわる疑問と正しい用法について紹介します。

Q.1 コンタクトをしたまま目薬を差しても平気?

A. コンタクトの種類によっては、装着したまま目薬が使用できるものとできないものとがあります。市販の目薬の場合、購入前に必ずパッケージを見て確認してください。

「コンタクト専用」「コンタクトしたまま」など、コンタクト装着時の点眼が可能とうたっているもの以外は、必ずコンタクトを外して目薬を差してください。そして、点眼してから5分くらい時間をおいて再びコンタクトを装着するようにしてください。
病院で処方された目薬の場合は、医師や薬剤師の指示に従ってください。

Q.2 こどもに目薬を差すときは?

こどもへの目薬の差し方① 基本の差し方
1. 石けんで手を洗う。
2. こどもの下まぶたをさげ、眼球と下まぶたのあたりに目薬を1、2滴落とす。
※目薬の先端が目やまつげにふれないように注意
こどもに目薬を差すお母さんのイラスト
3. 上を向いた状態で30秒~1分ほど目を閉じさせ、目薬が流れ出ないようにする。
こどもに目薬を差した後、目の周りを拭いてあげるお母さんのイラスト
4. 目のまわりについた薬液は清潔なガーゼやティッシュで拭き取る。
こどもへの目薬の差し方②目薬が苦手なこどもの場合
足を開いてこどもを寝かせ、こどもに目薬を差すお母さんのイラスト
1. 足を開いて座り、その中にこどもを寝かせる。このとき、怖がらせないように注意しましょう。
2. こどもの頭を押さえて点眼する。

Q.3 何歳から点眼できる?

A. 市販の目薬の場合は、パッケージや説明文書に年齢制限の記載があればそれに従い、特に年齢制限等の記載がなければ、目の症状や目薬の差し心地などを自分で意思表示ができる年齢になってから使用してください。それまでは医師に相談するようにしてください。

病院で処方された目薬の場合は、医師や薬剤師の指示に従ってください。

Q.4 目薬はいつまで使用できる?

A. 目薬のパッケージや本体などに明示されている「使用期限」は、未開封の状態での期限です。市販の目薬は開封後3ヵ月以内を目安に使ってください。使いきれず薬液が残ってしまった場合でも、雑菌などの二次汚染を考えて、処分するようにしてください。

ただし、開封後3ヵ月以内であっても、薬液内に異常(変色・異物・濁りなど)が見られた場合には使用を中止してください。
病院で処方された目薬の場合は、目薬によって開封後の使用期限が異なりますので、医師または薬剤師の指示に従ってください。

Q.5 目薬は1日に何度まで差せる?

A. 目薬はそれぞれ用法・用量が異なります。市販の目薬の場合は商品のパッケージや説明文書に記載の用法・用量を確認したうえで使うようにしてください。病院で処方された目薬の場合は、医師や薬剤師の指示に従ってください。

目薬の差し方を理解して、スムーズに点眼しよう

目薬を持って微笑む女性の画像
目薬の効果を得るためには、正しく使用することが重要です。また目薬を差すのが苦手な人も、ちょっとしたコツや器具を使用することで、克服できるかもしれません。目を健やかに保つためにも、本記事で紹介した内容を参考にしながら、正しく点眼してくださいね。

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