目がかすむ原因とは?対策と予防法も紹介
眼科医 小島隆司 先生

監修
眼科医 小島隆司 先生

医学博士、眼科専門医、専門研修指導医。眼表面の専門医で、角膜、屈折矯正手術および白内障手術を数多く執刀。特にドライアイ研究においては日本の第一人者。患者さんの視機能の向上に役に立てるようにと日々考え、対話を大切に日々診察にあたっている。また眼科学分野の発展を目指し、現在も慶應義塾大学で基礎研究および臨床研究を進めている。

「近頃、なんだか目がかすんで…。もしかしたらパソコンの使いすぎ?」 ちょっと待ってください!「かすみ目」は、目以外に原因が潜んでいる可能性もあるのです。 もしかしたら、重大な病気のサインかもしれません。まずはどのタイミングで、どんな風に「目のかすみ」を感じるかをチェックして、早めに対処しましょう。

「目のかすみ」とはどんな症状?

顔を隠している女性
「かすみ目」とひと言でいっても、その原因は単なる疲れ目から脳の疾患まで実にさまざまです。生活スタイルの改善で治るものであれば良いですが、仮に重大な病気の症状だった場合、早めに治療を受ける必要がある場合も。
まずは「かすみ目」とはいったいどんな症状のことを指すのか、どんなことが要因となり得るのかをチェックし、いち早く改善に向け対処しましょう。

「目がかすむ」=視界が明瞭ではない状態のこと

「目がかすむ」とひと口に言っても、もしかしたらその症状に対する認識は、人によって異なっているかもしれません。一般に「目がかすむ」という症状は以下の状態であることを指します。
  1. 物を見るときに、もやがかかったようにかすんで見えている状態
  2. 見たい物にピントがあわず、輪郭がぼやけて見えている状態
  3. 物を見るときに、その輪郭がゆがんで見えている状態
  4. 視野が狭くなったり、視野の一部が欠けていたりする状態
  5. 目やにが多く、もやがかかったように見える状態
上記のように、「目がかすむ」という状態は多様な症状を含んでいるのですが、いずれも「視界がクリアではない」という点で共通しています。
ここでは「視界がクリアではない」=「目がかすむ」という前提でお話をしていきます。

日常生活に原因がある「目のかすみ」について

PC作業の写真
目のかすみは「文字が読みにくい」「人の顔が認識しにくい」「運転の際に見づらい」など、生活の上でもいろいろなシーンで不都合が出てくるものです。

ではいったいどんな理由で目がかすむようになるのでしょうか?まずは日常生活に原因がある場合をみていきましょう。

原因その1. 目を酷使している

パソコンを使用する機会が多い人は、集中してモニターを見続けていて目がかすむ経験をした人も多いのでは。これは一カ所にピントをあわせ続けることで、目の中のピント合わせをする筋肉が疲労し、徐々にピントをあわせる力が弱ってしまうから。同様に、度のあわないメガネやコンタクトの使用も、目のかすみの原因になります。

原因その2. 目が乾燥している

夏は例年「真夏日」「猛暑日」が連日続き、エアコンの使用が欠かせなくなっており、またコロナ禍により在宅勤務も増加したことにより夏・冬関わらずエアコンの使用率が増えています。
しかしエアコンの連続使用も要注意。空気が極端に乾燥することで目が乾き、知らず知らずのうちに角膜が傷つくことで目がかすむ可能性があります。
また気温の高い屋外と、低い屋内とを行ったり来たりすることで自律神経が乱れ、それが目のかすみの原因になることもあります。

原因その3. コンタクトをつけっぱなしにしている

近頃では「連続装用タイプ」のコンタクトも人気ですが、決められた使用方法を守らないと目のトラブルを起こす原因となります。中でも角膜を傷つけてしまった場合、目がかすむようになる可能性があります。
また、長時間装用していなくても、コンタクト自体に、ほこりや化粧品などの油分の汚れが付くことで、視界がかすむケースもあります。

疾患の症状である「目のかすみ」について

診療を受けている女性
次は疾患が原因となり、目のかすみを引き起こしている可能性について見ていきます。実は直接目とは関係のない疾患が、目のかすみという症状となって表れている可能性もあるのです。

原因その1. 眼疾患を患っている

40代以降の方で、これまで問題なく見えていた近距離の物にピントが合いにくくなり、ぼやけて見えるようになった場合はまず「老眼」の可能性を疑ったほうがよいでしょう。
それ以外にも、水晶体という目のレンズが加齢により白く濁ってしまう「白内障」や、眼圧の上昇により視界が欠けたり、狭くなったりする「緑内障」、目から入った光を像として脳へと伝える網膜が、一部変質してしまう「黄斑(おうはん)変性症」なども、症状のひとつとして目のかすみを発生させる場合があります。

原因その2. 糖尿病による合併症にかかっている

糖尿病はさまざまな合併症を引き起こす疾患として知られています。糖尿病で起こる主な目の合併症に「糖尿病網膜症」という病気があります。
これは、血糖値が高い状態が長い間続くと、細かい毛細血管が密集している網膜の血管が傷ついたり詰まったりすることにより、視力が低下するといった目のかすみにつながる病気です。
放置すると白内障や緑内障など他の疾患を引き起こすだけでなく、最悪失明の可能性がある怖い病気です。

原因その3. 脳疾患を患っている

「ものを見る」ときは、目から入った情報が網膜を通じて脳へ伝わることで像をとらえます。このとき脳梗塞(のうこうそく)や脳腫瘍(のうしゅよう)などの脳疾患がある場合、像をとらえる能力に問題が起き、視力や視野に異常が発生する可能性があります。
またこれらの脳疾患が原因で脳圧が上昇したときには、数秒の間目の前が白っぽくなるといった一過性の視力低下が起きる場合もあります。

疾患が考えられるときは病院へ

このように、目のかすみには疾患が原因となって起こるケースもあります。気になる場合にはまず医療機関を受診し、これらの疾患の可能性がないかをしっかりチェックしておきましょう。

自分でできる! 目がかすむときの対策とは?

目薬をさす女性
病院ですぐに診てもらう必要のある疾患でなければ、まずは目のかすみの原因を、しっかり改善することを心がけて。クリアで良好な視界を取り戻しましょう。

目を温めて血行を促進する

まずは蒸しタオルなどを使って目を温めましょう。目の周囲の血行がよくなることでコリがほぐれ、疲れ目が回復します。蒸しタオルは高めの温度のお湯につけて絞ったり、軽くしぼったタオルをレンジでチンしたりすれば手軽に作れますね。
逆に目を酷使しすぎて周囲が熱を持っているようなときは、温めることで症状が悪化する恐れがあります。この場合は冷蔵庫で冷やしたタオルを目に当てて、熱を取りましょう。

目薬やビタミン剤を利用する

薬局で購入できる市販の目薬やビタミン剤を活用することで、目のかすみを軽減することができます。

1. 市販の目薬の選び方
「病院で処方された目薬でなければ効き目が薄いのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、市販の目薬にもピントが合いにくいといった症状の改善に効果のあるものがあります。
購入するときは成分表を確認し「ネオスチグミンメチル硫酸塩」や「ビタミンB12(シアノコバラミン)」配合のものを選びましょう。これらはピント調節機能の改善に効果のある成分です。    

2. ビタミン剤(錠剤・ドリンク)やサプリメントの選び方
ビタミン剤やサプリメントなどを活用し、栄養を補うことで改善が見込めるものもあります。ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12は欠乏すると視神経に支障をきたしたりするので、摂取してみるのも良いでしょう。ビタミンB2は角膜の炎症に効果的です。
また、目の細胞や粘膜の新陳代謝を助けるビタミンAもおすすめです。ビタミン剤やサプリメントで体の中から改善をしましょう。

日常生活で意識したい「目のかすみ予防法」

手をひさしにして紫外線を避ける女性
特に疾患が原因でない目のかすみは「酷使したこと」によるものが大半です。そこでまずは「目を疲れさせすぎない」ことを意識するようにしてみましょう。

1. こまめな休憩をとる
パソコンを日常的に使用する仕事では、モニターを長時間凝視することを避けるようにしましょう。1時間ごとに約15分は目を休めれば、ピントをあわせる目の筋肉が疲れすぎず、かすみ目を回避できます。

2. パソコンやテレビと適正な距離を保つ
焦点をあまりに近くであわせすぎることも、筋肉が疲労し目のかすみの原因になります。パソコンのモニターと目の間の距離が40cm以上、テレビの場合は1m以上離すようにしましょう。
   
3. 紫外線を防ぐ
筋肉疲労だけでなく、思わぬところで目にダメージを受けたことが目のかすみの原因となる場合も。特に日差しが強くなる4月から9月にかけては、UVカット効果のあるサングラスや日傘を活用し、目を紫外線から守りましょう。

目がかすむときは、原因に応じた適切な対処をしよう

疲れ目だけでなく、重大な病気のサインの可能性もある目のかすみ症状。放っておくと病気が進行してしまい、視力が低下してしまう場合も。そうならないためにも、早めに原因を見つけて、すぐ対処することを心がけましょう。いつまでもイキイキとした目でいたいものですね。

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