近視の原因が知りたい! 視力回復はできる? 気になる近視のメカニズムを紹介
眼科医 佐藤昌昭 先生

監修
眼科医 佐藤昌昭 先生

和歌山県にある、さとう眼科 院長。日本眼科学会認定 眼科専門医。平成14年の開院当初より午前7時半のオープンと24時間の電話対応を行っており、現在では往診範囲を3県15市町村に拡大の上、無料送迎も実施している。医療過疎地での地域密着医療に日々尽力している。

物をハッキリと見るためには、目から入った光が、目の角膜や水晶体で正しく屈折し、網膜上で焦点が結ばれることが必要です。
近視とは、この角膜や水晶体での光の屈折がうまくいかず、網膜の手前で焦点が結ばれてしまい、近くのものを見るときは目のピントが合うものの、遠くのものを見るときはうまくピントが合わせられずにぼやけて見えるようになる状態のことを言います。
近年、近視に悩む人が増えていると言われており、大人のみならず、子どもの視力低下も急増しているそう。
しかし、その詳しい原因やメカニズムについては意外と知らない人も多いのではないでしょうか。
近視の仕組みや症状を正しく知り、対処していきましょう。

原因を探る前に! 近視には2種類ある

メガネを持つ女性
近視には大きく分けて2種類あると言われています。ここからはそれぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

近視の種類①「軸性近視(じくせいきんし)」

近視の種類の1つ、「軸性近視」は、「角膜から網膜までの距離が長い」ことに起因するものです。眼軸(がんじく)と言われる目の軸が伸びて長くなってしまうことで、目から入った光が網膜まで届かずに手前で焦点が合ってしまい、ピントが合わないことで近視になります

伸びてしまった眼軸の回復は見込めないため、「軸性近視」になると近視が回復することは難しいようです。

近視の種類②「屈折性近視(くっせつせいきんし)」

もう1つの近視は「屈折性近視」と言われ、「角膜や水晶体の屈折力が強すぎる」ことに起因するものです。近くのものを見るとき、通常は水晶体が厚くなることでピントを合わせますが、厚く膨らんだままの緊張状態が続くと遠くのものが見えにくくなり、近視になります

屈折性近視の中には、薬物や食物の中毒によって引き起こされる一時的な近視(仮性近視)もあります。その場合は眼科での治療で回復が期待できるものもあるため、気になる方は眼科で相談してみましょう。
正視・軸性近視・屈折性近視の図説

近視を引き起こす原因とは

スマホを見る子供
近視の原因には、遺伝的要因と環境的要因がそれぞれ関与していると考えられています。近年増加している子どもの近視には、環境的要因が大きく影響しているとも言われています。どんなことなのか、詳しく解説していきます。

遺伝的要因

遺伝的要因とは、先祖や親から受け継いだ遺伝子が原因で近視になってしまうことです。
両親が近視ではない子どもに比べると、片親が近視である子どもが近視を発症するリスクは2.17倍、両親が近視の場合では5.4倍と言われています。

近視には、メガネなどによる矯正で良好な視力を得られる「単純近視」と、矯正しても視力が出ず、さまざまな合併症を生じる「病的近視」があります。特に後者の「病的近視」においては、遺伝要素が強いと言われています。

環境的要因

環境的要因とは、日常的に目に良くない“環境下での行動”が原因で近視になってしまうことです。
例えば、近くのものを見る習慣が続くと、目の毛様体筋が過度に緊張して水晶体の屈折力が強くなり、近視になりやすくなります

以前はそうした近くのものを見る作業として、読書のし過ぎなどが指摘されていましたが、近年はパソコンやスマートフォン、タブレット端末、ゲーム機など、日常的に長時間に渡って電子デバイスを使用する環境が主な原因の1つとして考えられています。

なお室内照明の下で過ごすよりも、曇りの日や日陰に関わらず屋外で過ごす時間が長い方が、明るい光が目の網膜に到達しやすくなります。すると網膜内で、光誘導性ドーパミンと言う物質が発生します。これによって近視になりにくいと考えられています。そのため室内で過ごす時間が多いことも、近視の原因であるとされています。

子どもが近視になる原因

文部科学省の学校保健統計*によると、裸眼視力1.0未満の子どもの割合は増加の一途をたどり、小学校では3割を超えて、中学校では約6割、高等学校では約7割と報告されており、子どもの近視は現代の深刻な社会問題であると考えられます。

*文部科学省. 令和4年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)確定値.令和5年11月28日

こうした子どもの近視の主な原因としては以下が考えられています。

・両親が近視である
・屋外遊びをしない
・寝る時間が遅く、睡眠時間が短い
・スマートフォンやゲーム機を長時間使用する
など
ここ数年で急激に近視の子どもが増えている背景には、パソコンやスマートフォン、タブレット端末の普及による電子デバイスへの日常的な接触機会や時間の増加が大きな原因と考えられており、対策を講じる必要があると言われています。

子どもの近視の原因が分かったら。発症と進行を遅らせるためにできること

屋外で遊ぶ子どもたち
遺伝や環境が原因で眼軸が伸びてしまったことによる近視は治すことはできませんが、子どもの近視の予防には屋外活動が効果的とされており、その他にも抑制する方法はいくつかあると言われています。ここからは進行を抑制する方法とそれぞれのメリットやデメリットについて説明します。

メガネを使用する

手軽にかけはずしができて、安全性が高いことがメリットですが、激しい運動時は邪魔になってしまうこと、またメガネをかける位置や目線の使い方によっては効果が得られにくいといったことがデメリットです。

コンタクトを装着する

強い度数にも対応でき、見た目が変わらないことがメリットですが、装着方法やレンズケアについて子どもが正しく理解する必要があります。

オルソケラトロジー治療を行う

オルソケラトロジーとは、特殊形状のハードコンタクトを睡眠時に装着することで角膜形状を変化させ、近視などの屈折異常を治療する方法のことです。
前提として、オルソケラトロジー治療は、原則、目の病気がなく、軽度から中等度(-4.0Dまで)の近視あるいは乱視度数が-1.5D以下であることが対象とされています。

起床後は裸眼で過ごすことができ、装着を中止すれば2週間程でほとんど元の眼の形に戻る、見た目が変わらないことなどがメリットです。反対にデメリットとしては、治療費が高額であること、強い度数は対応できないこと、度数変動があるため予備のメガネが作製しづらいことが挙げられ、装着方法やレンズケアを正しく理解する必要があります。
オルソケラトロジーによる近視治療の図説

近視で目が疲れてしまった!そんなときは目薬を使おう

目薬をさす女性
近視で物が見えにくくなると、目のピント調節を行っている毛様体筋の疲労から「疲れ目」を感じることがあります。目が疲れたら、放置したままにせずに、下記成分が含まれている市販の目薬で症状をやわらげましょう。

目に栄養を与えて疲労を緩和させる目薬

<成分>
・パンテノール(プロビタミンB5
・ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)
・ビタミンE(酢酸d-α-トコフェロール)
・タウリン(アミノエチルスルホン酸)
・L-アスパラギン酸カリウム
など

目のピント調節機能の改善を目的とした目薬

<成分>
・ネオスチグミンメチル硫酸塩
・シアノコバラミン(ビタミンB12

近視の原因を理解したら、できる対策を心がけましょう

休憩する女性
近視の発症や進行には、遺伝だけではなく環境も大きく関与しています。その原因によっては、治すことが難しい場合もありますが、症状が悪化することによる急激な視力低下を防ぐためにも、子どもに対しては、定期的な眼科検診を受けて視力を把握し、近視の度数に合った適切なメガネやコンタクトを装着させたり、屋外での活動時間を増やすようにすすめましょう。

また電子デバイスの使用など長時間近くのものを見続ける行為には、対象物から30cm以内に近づくことや30分以上連続して続けることは控えるように注意しましょう。また目が疲れたなどの症状があれば、その症状に応じた目薬の使用を促すなど、目の健康を保つべく生活習慣の見直し、対策などをしていきましょう。

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