ぼやけて見える原因は、視力低下だけとは限らない! 症状に合った対策を
眼科医 大高功 先生

監修
眼科医 大高功 先生

横浜相鉄ビル眼科医院 院長。慶応義塾大学医学部卒。日本眼科学会認定眼科専門医。ワシントンの医学データベースにアクセスし、世界の最新の情報をキャッチ。常に患者さんを自分自身と考え「自分が患者ならもっともしてほしい治療」をお勧めしている。一発の手術でその人の人生の流れを変えられるような「眼外科医」を目指し、日々手術を執刀。

すっきりと見えず、ぼやけて見える時、「視力が下がったから」と思っていませんか? ずっと視界がはっきりしない、白く霞がかかったように見える、などの症状があるときには目に病気が潜んでいる可能性があります。この記事では、ぼやけて見える原因と症状を紹介します。自分の目の状態をチェックしてくださいね。

一時的にぼやけて見えるときに考えられる原因

本の文字が見えにくい女性
一時的にぼやけて見える場合には、目の疲れやドライアイ(目のかわき)など、日常生活の中でよくあることが原因かもしれません。これらの場合は、環境を整え、目をいたわるように心掛けることで、改善することも多くあります。

【原因①】目の疲れや眼精疲労

ぼやけて見える原因としてまず考えられるのは目の疲れによるものです。
テレビやパソコン、スマートフォンの画面などを見続けていると、レンズの役割を持つ目の水晶体の厚みを調整する毛様体筋が緊張したままとなり、ピント調節がしづらくなることでぼんやり見えてしまうのです。
軽い疲れ目であれば、休憩や睡眠を十分取れば症状は改善します。しかし、目をそのまま酷使してしまうと「眼精疲労」となり、ぼやけて見える状態が治らないだけでなく、持続する首や肩の痛み、頭痛、吐き気、倦怠感、手足の痺れなどを併発することがあるので要注意です。

【原因②】ドライアイ(目のかわき)

目が乾いてしまう状態のことをドライアイ(目のかわき)と言い、これにより目がぼやけることもあります。
ドライアイ(目のかわき)とは、エアコンや強い風による乾燥や、パソコンに集中することなどによるまばたきの減少により起こります。
目が乾燥している状態だと目の表面を保護する涙の量が減り、目に負担がかかり、疲れることでピント調節がうまくできず、ぼやけて見えることもあります。

【原因③】コンタクトの誤った使い方

コンタクトを正しく使用しないことも、ぼやけて見える原因になります。
決められた装着時間を超えて着けっぱなしにしたりケアを怠ると、目が乾燥したり汚れが付着したりしてしまい、それが元でぼやけて見えることもあります。装着時間を守り、毎日正しく洗浄することが大切です。また、傷がついているレンズを着けていると、ぼやけて見えるだけではなく、角膜に傷がつくこともあるので注意が必要です。

ぼやけて見える状態が戻らないときに考えられる原因

目が見えにくい女性
常にぼやけて見える状態が続いている場合、何らかの病気である可能性があります。そのような場合には、眼科を受診し、適切な治療を受けましょう。
ぼやけて見えるときに考えられる病気を紹介します。

【原因①】視界が白っぽく見える:白内障

目の中で、レンズの役割を果たしている水晶体が白く濁る病気を白内障と言います。
これは、視界が白っぽくかすむ、ぼやける、まぶしい、といった症状や、物を見るときのピント調節が働かないことで視力低下などが起きる目の病気です。最も多いのは加齢によるものですが、糖尿病などの他の疾患によって起きることもあります。

【原因②】視界の一部が欠けて見える:緑内障

目の神経に障害が起こり、視野がだんだん狭くなっていく病気を緑内障と言います。徐々に視界が欠けていき、進行するとぼやけて見えたり、視野が狭く感じたりするようになります。
緑内障は自覚症状が現れにくく、視野が欠けていることに気付きにくいため発見が遅れることも多い病気です。緑内障で失った視野を元に戻すことはできず、場合によっては失明にいたることもあるため、早期発見・早期治療が重要です。

【原因③】視界の中心がぼやけて見える:加齢黄斑(おうはん)変性

黄斑とは、物を見るのに重要な細胞が集中している網膜の中心部のことです。
黄斑に障害を受けると、視界の中心がぼやけたり、歪んで見えたりします。片側の目からあらわれることが多く、残りの目で見えにくさを補うため、異常に気づくのが遅れる場合があります。

【原因④】視界がぼやける:ぶどう膜炎

ぶどう膜とは、眼球の内側にある、光の量を調節する「虹彩」、ピント機能を調節する「毛様体」、網膜に栄養を運ぶ「脈絡膜」の3つの組織の総称で、眼球を包むように広がっている組織のことです。このぶどう膜が炎症を起こす病気をぶどう膜炎と言います。
視界がかすむ、まぶしい、虫のようなものが飛んでいるように見える飛蚊症など、見え方に異変が起こるのが特徴で、これらの症状によりぼやけて見えてしまいます。
目に痛みや充血も起こりやすく、ぶどう膜炎を発症すると、合併症として白内障・緑内障・黄斑浮腫・黄斑変性などを引き起こすこともあるので注意が必要です。

ぼやけて見えるときに自分でできる対処法

目薬をさす女性
目の病気ではなく一時的にぼやけて見える症状の場合は、市販の目薬などで改善することも期待できます。ここでは、日常生活の中で、自分でできる対処法を解説します。

症状に応じた市販の目薬を使用する

一時的にぼやけて見えるときは、疲れ目に効く目薬や目の乾きを抑える目薬を使用するのがおすすめです。症状ごとに、おすすめの目薬の成分を紹介します。

①ピント調節機能を助ける
パソコンやスマホの使い過ぎによる目の毛様体筋の緊張をやわらげ、ピント調節機能の改善をサポートしてくれます。
<成分>
・ネオスチグミンメチル硫酸塩
・ビタミンB12(シアノコバラミン)
 
②目に栄養を与える
目の細胞に栄養を与えて活性化させたり代謝を促したりする働きがあり、目の疲れにおすすめです。
<成分>
・パンテノール(プロビタミンB5
・ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)
・ビタミンE(酢酸d-α-トコフェロール)
・タウリン(アミノエチルスルホン酸)
・L-アスパラギン酸カリウム
など

③ドライアイ(目のかわき)
目のうるおいを保持して乾燥による刺激を防ぎます。
<成分>
・コンドロイチン硫酸エステルナトリウム
・ヒアルロン酸ナトリウム
・塩化ナトリウム
・塩化カリウム
など

目を休ませながら、疲れないように工夫する

一時的にぼやけて見える原因のほとんどは、目の疲労が原因と言われています。そのため、まずはゆっくり目を休ませることが大切です。目をつぶるだけでも効果がありますが、ここではより疲れ目の症状がやわらぐ方法を紹介します。

① 目のマッサージ
目を閉じ、両手の親指を眉頭の下に置きます。そのまま目の周囲にある骨に沿ってやさしくマッサージをしましょう。目の筋肉のコリがほぐれます。

② 目を温める
蒸しタオルやホットアイマスクを目に乗せ、温めましょう。水晶体を支える毛様体筋の緊張が緩みやすくなります。やけどには充分気を付けて。

③ パソコンやテレビなどの室内環境を整える
パソコンやテレビなどと、ある程度距離が保てるような配置にしたり部屋の明るさを調整したりすることも疲れ目の予防になります。

④紫外線対策
外出時、UVカット効果のあるサングラスや日傘を使って直射日光を避けるようにしましょう。水晶体が紫外線を浴びることによりダメージを受けるのも防いでくれます。

ぼやけて見えるのを防ぐために! 自分に合ったコンタクトの選び方

コンタクトレンズ
今はカラーコンタクトなども量販店やネットで簡単に購入できるため、眼科での検査を受けないまま購入し、自分の目に合わないコンタクトを使用している人もいます。ぼやけて見えるなどの症状が出ている人も含め、コンタクトを使用する場合は、眼科を受診し、自分の目の悩みに合ったものを選ぶようにしましょう。

自分の目に合った度数や見え方のレンズを選ぶ

コンタクトを購入する際は、眼科で診察・処方を受けてから購入することが必要です。
専門家のきちんとした検査をせず、目に合わない度数のコンタクトを使用すると目の疲れにつながり、ぼやけて見えるなど不快な症状につながる可能性があります。
また、コンタクトには近視、遠視、乱視などによって低下した視力を合わせる目的があるので、眼科での診察・検査により自分の目に合ったコンタクトを使用することが重要です。

適切な酸素透過率やベースカーブのレンズを選ぶ

自分に合ったコンタクトを選ぶためには、「酸素透過率」や「ベースカーブ」も重要になります。
これも自分では判断できないので、眼科の診察が必要。それぞれの詳細を解説します。

・「酸素透過率」
レンズを通して目に届く酸素の量を数値化したもの。酸素透過率が高いほど角膜への負担が少なくなりますが、高すぎると目が乾燥しやすくなる場合もあるので、ドライアイの人は気を付ける必要があります。
   
・「ベースカーブ」
コンタクト内面のカーブ(曲率半径)のこと。カーブがきついと目に張り付いてしまい、角膜に負担がかかりやすくなり、逆にゆるすぎるとレンズが外れやすくなります。いずれも目とカーブが合わないと目の疲労につながり、ぼやけて見えてしまうことがあります。

ぼやけて見えるときは、症状に合った対策を取ろう

すっきりした表情の女性
ぼやけて見える原因は、目の疲れ、ドライアイ(目のかわき)などだけではなく、病気の可能性もあります。一時的にぼやけて見える場合には、市販の目薬を使ったりしながらケアをしましょう。それでも治らないときや、病気が疑われる場合には、早めに眼科を受診してくださいね。

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